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独断BOOKREVIEW
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ここでは最近読んだ本について厳しく採点します。 評価は ☆印で5つが最高です。あくまでも私個人の独断のブックレビューなので、その点はお含み置きを。
本日の新着本
「消費増税では財政再建はできない」 ☆☆☆☆☆ 野口悠紀雄 ダイヤモンド社 1500円+税
私の知る限り、日本の最高経済学者の一人である著者は、消費税10%に引き上げしても、わずか2年で元の黙阿弥、かえって財政状態を悪化させると明確に断言! 国債の消化も(消費税増税後でも)2028年には破綻してしまうとのべ、この国債破綻回避への道筋も提示する。 また、円高を防ぐための為替介入は、かえって貿易収支を悪化させるなど、実際の数値を掲げて批判する。 しかし、どうして日本はこんなになってしまったのだろうか。 わたしなぞ、消費税引上げは小沢対財務官僚との最終戦争だろう、くらいにしか考えていなかったが、それどころではなかった。 原発を推進してきた自民党と原発事故が起きたら隠ぺいする民主党、官僚と大企業、マスコミの癒着(*)が、ここまで日本をダメにし、まだこれからも震災復興と、原発再稼働を旗印に、これまた消費税で二重に搾取しようとしているのではないか? との感を強くする。 しかし、これまで消費税増税を否定してきた他の学者が、「(今回)増税できないと、何一つできやしない日本政府という」国際的な評判の影響の方がより重要になってきたので、やむなく増税派に転向を宣言する、ということすら出てきたのである。 まっこと情けない我が国である。
(*)「政府は必ず嘘をつく」堤未果 角川ssc新書より引用
「飼い喰い」 ☆☆☆☆ 内澤旬子 岩波書店 1900円+税
「世界屠畜紀行」で、世界中の「屠場」をめぐり、精細なイラストとともに「人間は肉を食べて生きてきた」ことを、とことん追求してきた著者による、今回はなんと、自分で3頭の豚を育て、そのすべてを食べつくすという、前人未到、驚愕のエッセイである。 しかし前著を読んでいた私は、彼女ならこのくらいのことなら、何の抵抗もなくやり遂げるであろうことは織込み済みだったので、安心して頁をめくることができた。 というか、読み始めたらグイグイ引き込まれてもうやめられないのである。 女手一つ!で3匹の「夢、秀、伸」と名付けられた子豚が半年で100キロもの成体となり、自分の口で食すまでの奮闘、苦闘ぶりは、ほほえましくもあるが、多くの関係者の援助もあり、ここまでよくやり遂げたなあとの感動すら湧いてくる。 命について大上段に振りかぶらない彼女のスタンスと、と緻密なイラストがより好ましい。 そして一枚だけ写真が。 豚の頭蓋骨を前にした著者のポートレート写真である。 この写真には、私も背筋が伸びるのである。
「資本主義以後の世界」 ☆☆☆☆ 中谷巌 徳間書店 1600円+税
先進国における資本主義の没落は、もはや構造的なものであり、次の文明への体制転換が求められている。 との主張である。 下記の水野和夫の名著とおおむね同じようなことを、違う例や簡潔に平易な言葉で述べている。 また経済学者としての視点からの貴重な提言も多い。 アメリカ的な経済功利主義一辺倒から、日本の「信頼」をベースにした社会へ、里山、脱原発へ、との
「以後の世界」のイメージは、どことなく「3丁目の夕日」に似ている感がする。 「終わりなき-」に挑むのは、ちょっと勇気が必要という読者には、活字も大きい同書をおススメする。
*資本主義以後の世界がそこに来るといっても、ここ数年でという話ではない。今後10年、20年のスパンで劇的に変わるということだろう。 私たちは今、大げさではなく、大航海時代、産業革命時期、大恐慌時代と比較される、経済史の奔流のまっただ中にいるのだ。
「誰が中流を殺すのか」☆☆☆ アリアナ.ハフィントン 森田浩之訳 2000円+税 阪急コミュニケーションズ
副題に、アメリカが第三世界に墜ちる日とある。著者は著名なコラムニストで 機会平等だったはずの国アメリカがもはやそうではなく、ごく少数の富裕層が国富の多くを所有し、中流層とされる大多数の人々は、その親の代よりも生活が苦しくなっている。 さらに貧困層も増加し、より上の生活へ移行することは非常に困難になってきている。 政府はこれらに早く対応しなければならないと主張し、格差是正を求めてのデモが行われるような米国になぜなってしまったのか?についても警鐘を鳴らしている。 高度資本主義社会。金融資本主義、の行き着くところが、まさにこのような社会であろうことは、私にもよくわかる。 F.フクシマの「歴史の終わり」からそう時間がたたないうちに、今度は「資本主義の終わり」に近付いているようだ。 わが国ももう格差社会に移行しつつある中で、大きなパラダイムの転換が必要なのだろう。 下記著作で水野和夫が示した歴史の巨大なうねりの一端が、日本がお手本にしてきたアメリカで進行しているのである。
「終わりなき危機 君は グローバリゼーションの真実を見たか」 水野和夫 日本経済新聞出版社2800円+税
見るからに大著である。 なんと全536n中、注記のみで180nもある詳細さとこの価格が購う気持ちを衰えさせるのだが、「君は」とある、若い人に呼び掛けている雰囲気の書物を私が読まないということにはならないだろうとの義務感から相当の躊躇の後に少し無理をしてしまった。(情けないがホントのハナシ)
記載内容については実のところ膨大で簡単にまとめられるようなシロモノではないが、多くの統計データと、歴史的、文化的、経済学的、地政学的背景とから「1970年代以降のインフレと資産バブルの生成期と崩壊期をとらえ、21世紀がどの方向へ向かうのか」について考察している。 そしてまさに、今は世界史の終わりに向かう中間地点であると指摘するのである。 幾度も読み返したが、完全理解はできず(完全納得はできる) 中間層の没落が歴史の必然的結果であることをダメ押しする衝撃的内容でもある。 私には簡単には☆の付けようがない中身の濃さと知的領域の広大さに感服。
「世界恐慌の足音が聞こえる」☆☆☆☆ 榊原英資 中央公論新社 1400円+税
また恐慌ものかよ!と思われる方もおられようが、そうもいくまい。 田舎会計士の私に課された使命(勝手に自分でそう決めているだけだが)の一つに、将来予測がある。 そうすると避けては通れない「書名」なのである。 ミスター円とも呼ばれた重鎮だけに、文章表現は慎重(悪く言えばあいまい)で、〜となっていくでしょう、といった、「ぼかし」が多い。 (先にあげた浜矩子氏などとは異なる) このぼかしを断言に読み替えてみると 「アメリカは立ち直れず、ユーロは解体局面に、金融は大崩壊し、近代資本主義も終わり、数百年一度の大きな構造変化が起きて、再び大恐慌が来る可能性は低くなく十分ありうるシナリオである」とくくっている。 読者諸兄がどのように思われるかはともかく、今大きなうねりの中にいることだけは間違いなさそうである。 読みやすいので、実感の湧かない方にもご一読をすすめたい。
「EUメルトダウン」☆☆ 浜矩子 朝日新聞出版 1300円+税
第1刷が2011年12月30日となっており、まさに未来予測か!?である。 ことの緊急性を鑑みて一読だけでアップすることにした。 副題に欧州発世界がなくなる日、となっている。 同書はまるで口述筆記のような文体で、現在進行形で語られ、ユーロの激変の裏を知るための、過去からの流れを中心に記述している。 すなわち、過去を知れば未来が見える-という著者の信念でもあろう。 どこかでの講演内容といった仕上がりである。 同氏好みの寓話に絡めたストーリーも見受けられるが、最新のTV経済ニュース解説ほどの新規知見は見当たらない。 やっつけ値段の書物はやはりやっつけ仕事でしかないのか、の感を強くした次第。
「2012年資本主義経済大清算の年になる」☆☆ 浜矩子、高橋乗宣 東洋経済新報社1500円+税
超円高、ユーロ崩壊、米国破滅をいささかもぶれずに、主張し続けている浜氏の新著である。 その内容は、前著作群とほぼ同じで、多少円安気味の現時点でも、ひたすら「1$50円の時代は必ず来る」の言葉が象徴する論調である。 ただ一般向けするように平易な文章になっているので真実味がトーン ダウンしてしまう。 そのために、このテの本を初めて読もうと思った読者にはお勧めできるが、更なる著者の最新の思考を知りたいという向きにはそれほど役立たない感じも強い。 しかし残念なことに、共著者の高橋氏が同書のどの部分を担当し書いているのかが、私の読書力では認識できなかった。
「世界大恐慌」☆☆☆☆ 秋元英一 講談社学術文庫1100円+税
あの1929年に何が起こったか?について、一般市民の体験した事実や、恐慌に至った背景、市場がどのように崩壊していったか等について、きっちり描かれている。 先に紹介した「ハイパー、、、」の米国版ともいえる。 表紙には食料の配給を求めて並ぶ男の姿があり、悲惨さがにじんでいる。 あまりの空腹に失神する人々もいたと言う。 株価の暴落の直後から企業は解雇に走り大量失業は都市から広がっていった。 この恐慌はその後3年以上も続いていることに特に留意すべきと私は感じている。 来年、年明け早々から。もし我が国が恐慌になったとして、その3年後まで続くと仮定すると、この年齢の私にはほんとに厳しい老後になろう。 ただ失業者があふれたとはいえ、田舎を中心に2/3の市民には非常に厳しいながらも、仕事はいくらかはあったような感触である。(ただ単純労働ばかりだが)。 私は今のうちに大量に薪を割り、自然エネルギーを貯蔵し、ビールとの物々交換に備えようと決意している。
「日本のソブリンリスク」 ☆☆ 土屋剛俊、森田長太郎 東洋経済新報社2800円+税
副題に(日本の)国債デフォルトリスクと投資戦略とある。 もはや危険水域に達したとされる日本の国債の今後の想定されるシナリオと発生確率に基づいたデフォルトについて記載が進む。
消費税の引き上げ、デフレの脱却、国債の売れ行き、日銀の対応を、発生確率を推定し、最終結論を導いている。 これによると、財政事情はさらに悪化するが破滅にはいたらないが56%、ハイパーインフレの発生が7%、財政収支改善が実現し状況は安定するが20%、狭義のデフォルトが発生12%などとされる。 ちょっとばかし、ほっとする論調である。 後半の章は投資運用戦略について詳細に解説。 投資資産の無い私には全く関係ない話だが、睡眠薬代わりに無理読。 久しぶりの横書きの専門書には疲れてしまった。
「アメリカ先住民から学ぶ」 ☆☆☆ 阿部珠理 NHK出版 905円+税
小生まだ一度も聴いたことがないラジオ第2放送の「NHK カルチャーラジオ」今回取り上げるのはそのテキストである。 小生はこのテキストを見つけるとたいてい購っているのである。 それは@ 持つと軽くて携帯に便利。 A 活字が大きく非常に読みやすい。 B 意外と中身が濃い、などである。 しかもありがたいことに睡眠の友にも適している。 さて今回は、アメリカ先住民についてであった。 数多くの部族があり、インデイアンと呼ばれる彼らが、白人に土地を奪われ、内部対立を起こし、やがては保留地に追いやられる。 多民族国家アメリカでも、彼らの多くが最貧層となっている現状や課題、その歴史について概要を知ることができるのである。 このテキストがなかったら、これらのことを全く知らないままの私であった。(知ったからと言って何の足しになるかといわれても困るが) 多くの国で先住民はこのように追いやられ、貧困に苦しむ層が多いというのは早急に解決しなければならない重要問題だが、ただ、収入の確保のためにカジノの運営をさせるという政策には違和感が残った。
「世界経済は通貨が動かす」 ☆ 行天富雄「編著」PHP研究所1800円+税
歴史的円高、ドルの没落、世界の経済危機について、なぜそうなったのか?と現状と今後について、(財)国際通貨研究所の研究員らが分担して執筆している。 すなわち、国際金融について地政学的に、歴史的に概観し、21世紀のこれからの国際通貨制度がどうなるか?についても言及しているため、これ1冊で概要と総復習はできる。 ただ、問題はそれ以上のことは、研究員という立場がそうさせるのか、非難されたくないのか、財団の研究員だからか、言及してもあいまいな感じで私の望む突っ込んだ主張や展望、研究者個人の意見が少ないのである。(これがないとこんな本、学校の教科書と同じじゃないのか!?)
読了後、編著者の略歴からふと、その年齢を逆算すると少なくとも78歳。 すでに、もう15年以上も当財団の理事長で今なお現職!に君臨、とどまっているということにギョーテンしたのである。 やっぱりなあ、版元がPHPと知りつつも買った私がうかつだった。 (天下り財団に加担してしまったのだ、)
「ハダカデバネズミ」 ☆☆☆ 吉田重人・岡ノ谷一夫 岩波書店 1500円+税
名は体を表すとは、よく言ったもので、まさに、裸で!出っ歯の!鼠のことである。 この鼠、哺乳類では珍しい「真社会性哺乳類*」なのである。 しかも、変温動物とある。 アフリカの砂漠の地下に集団で住み(だから毛は不要?)、アリやハチのように、女王デバ*と少しの雄(王さま)デバ、他多くの働きデバ(兵隊デバやふとん係デバ)によって構成され、集団で子育てをするなど、その個性は際立っている。 働きデバが仕事をサボっていると、女王デバにどやされるというから、専制君主国家なのである。 一番の不思議は、寿命が30年以上と長命なことである。 諸兄は有名な「ゾウの時間ネズミの時間」という本をお読みになったことがあると思うが、 その理論からすると、あり得ないほどの長寿命なのである。 どうも、活性酸素により傷ついたタンパク質の修復力が強いらしい。 わが国でも数少ないながら、動物園などでも鋭意飼育研究されており、人気急上昇中と言う。 (下手すると、研究者の研究寿命よりデバネズミの寿命の方が長い!ということか! これではどっちが研究対象かよくわからん)
* 生殖行動を行うのがたった1匹のメスと雄少数というシステムのことを、真社会性という、とのことである。
* 本当なら、「女王ハダカデバネズミ」と書かなければならないのだろうが、これでは舌をかんでしまう。
「激動予測」 ☆☆☆☆ ジョージフリードマン 早川書房1800円+税
先にも取り上げた、100年予測の著者による、近未来の予測である。 帯には、ドイツとロシアが接近、中国は国内問題により弱体化、アメリカはイランと和解、日本は短期的に経済、人口問題が足かせとなるものの、力を蓄える。 アメリカの金融危機が世界的に経済ナショナリズムをもたらす。 とある。 おおむね私の見立てと一致しているのが、逆に不安な点である!?。 さて、各章の終わりには、その章のポイントがまとめられているので、この私にも理解しやすい。 もちろん視点が米国中心なので、日本はどうなるか?については創造力を働かすしかないのだが、アメリカという国家が対外諸国をどのように捉え、行動しようとしているかがよくわかる。 その意味で現在の日米の関係についても、一般には見えにくい覇権国アメリカの意図が浮かび上がってくるのである。 そのことが読めるだけで、一読の価値があろう。 原題はThe next decadeだが、日経のそれよりは信頼ができそうである。
「働かないアリに意義がある」 ☆☆☆ 長谷川英裕 メディアファクトリー740円+税
いやーっ、なんと心地よい響きの書名であろうか! 私の存在もこれで意義があることが証明されたようなものである。 本書は進化生物学者である著者が社会性昆虫の代表ともいえるアリの社会性について実地に調べ上げたものである。 すべての働きアリがせっせと餌を取ったり幼虫の世話をしたりしているものとばかり思っていたが、事実はそうではなかったのである。 何事も起こらなければ、働くことも戦うこともせずに一生を過ごすアリが7割もいると言うのである。 ただし彼らはある特定の危機が迫った時(ある「閾値」に達した時)には遺伝子のスイッチが入り、必死に働き始めると言う。 いわば予備役というべきか。 それにしても著者は働くありと働かないアリを、(目印をつけたのかもしれないが、どのように?)区別して認識していたと思うとオドロキである。 進化というのは本当に奥が深い。
閑話休題 あるときEテレを何気なく見ていたら、題名も出ずに、突然、4コマ漫画がはじまった。 @アリさんは暑い日も休まずに一生懸命働いていました。 A キリギリスさんは歌ってばかりいました。 B そして、寒い冬が来てアリさんは貯めた食料を食べ暖かく過ごしました。 C キリギリスさんは、残り少ない食料をたべながらもなんとかギリギリ生き延びることができました、とさ。
なんじゃあぁ〜 この4コマ漫画は変だなあオチがないぞ!! と突っ込みたくなったら、ここでこの漫画の題名が映しだされた。 たしか、「わりとギリギリッス!」。
「ハイパーインフレの悪夢」 ☆☆☆ アダム・ファーガソン 黒輪篤嗣、桐谷知未 訳 新潮社2000円+税
第一次大戦の賠償金を払わねばならなかったドイツにおけるハイパーインフレについて、時系列ごとにその事実を積み重ねて、人間と社会が崩壊していく過程を描いている。 わずか数年の間に、物価は1兆倍にもなり、(通貨価値は1兆分の1に下落)、喫茶店でコーヒーをたのみ、勘定するときには、もう価格が倍近くになっていたとか、マルク紙幣の入っているトランクを奪われたが、紙幣は捨てられていたとか、農家は物々交換にしか応じなくなり、中産階級や公務員、知的職業階級は没落。 人々はモノを売っておカネを手にした途端、ほかのモノを買いあさった、という。
道徳規準はなくなり、失業者が蔓延し、略奪、餓死さえも。 どうせ価値がなくなるのならと、豪華に散財をする層も。 そしてすべての人々が人間の尊厳さえ失ってしまった。 貨幣は「ただの交換手段にすぎない」のだから、その価値を人々が認識しなくなったときには、紙幣は紙くずになってしまうのだ。 ちなみに、インフレが収まったときには、食料をため込んでいた農民らもが一気に放出せざるを得なくなり破産したともある。
政府の無策と人の心理は、破滅への道なのかもしれない。 我々は当時のドイツについて、反面教師にする必要があろう。
「腰痛探検家」 ☆☆☆高野秀行 集英社文庫 600円+税
誰も行かないような辺境の地を旅して、文章で生計を立ている探検家が腰痛になったらどうなるか? 私のように平素ふらふらしていても、30年もの付き合いのある腰痛だけはできれば金輪際ご勘弁なので、著者の苦しみは十分察がつく。 著者は、民間療法から鍼灸、西洋医学、はてはちょっと怪しい治療院まで、腰痛退治のためにひたすら彷徨し、完治を求め、苦悶苦闘したのであった。 前代未聞の記録というか、他人には抱腹絶倒だが、私には著者の気持ちが痛いほどわかるので笑い飛ばすこともできない。 同じ悩みをもった同輩が自分より苦しんでいるのを知り、私の腰の痛みも多少は治まりました。 いやはや腰痛は奥が深いのであります。 長年腰痛に悩んでいる方には必読。
「国家債務危機」☆☆☆☆ ジャック・アタリ 林昌宏 訳 作品社 2200円+税
この何年かの間、小生はソブリンリスクやカタストロフィーについてばかり、思いを巡らせていた。 著者はわずか38歳でミッテランの特別補佐官を務め、昨年仏の財政再建戦略をまとめた人物である。
同書によると、覇権国=先進国はEU、日本を含め、公的債務の増加は適切な対応をしなければ、その増加に歯止めがかからず、その行き着くところは、極端な緊縮財政、国家破産、最悪の場合には戦争、という選択肢になると言う。 これは歴史的に見てもほぼ必然のように指摘する。 つまり今から数ヵ月後のギリシャのようになる(私の想像)というのだろう。 そうなれば、公共サービスは破綻し、荒廃した社会になるのである。 これらを回避する方法についても言及しているが、日本の政治家にはできない相談だろう。 過剰債務に陥った国はほとんどがデフォルトになるというのだから、日本でもいずれはそうなるのだろう。 情けないが、今の日本じゃ当然か。 できることなら、最悪の事態を少しでも引き延ばし時間稼ぎをつつ、東南アジアの安全な国へ移住するしかないのか? それとも消費税を20%に引き上げるか? 無力感が強い読後であった。
「山でクマに会う方法」☆☆☆☆ 米田一彦 山と渓谷社 860円+税
著者はフリーのクマ研究者で、ツキノワグマ一筋に生きるために、県職員を退職してから、なんと27年。 365日クマとともに生きるため、その越冬生態、行動研究を行っている。 それだけでも感動するような略歴である。 数えきれないクマとの邂逅、駆除の立会。 ツキノワグマはすでに九州では絶滅、四国でもほぼ絶滅が見えてきている。 西日本も減少が続いているという。 ああ、この著者がいずれ引退するときには、日本のツキノワグマも絶滅してしまうのではなかろうか? 文章は淡々とクマの生態や行動について自らの体験をもとに記述されているが、その隅々に、クマへのまなざしが優しいのが切なくもある。
ちなみに、クマは冬眠明けには越冬穴の樹木の壁をかじったりし水分不足から、太く大きな糞をする(この糞をその硬さ?から栓というのだそうな)のだが、そのあまりの辛さに、このとき大きな脱糞の悲鳴を上げるそうな。 うーむう。
読者諸兄、やはり水分はたっぷり取りましょう。
誰も知らないサプリメントの真実 ☆☆☆ 高田明和 朝日新聞出版740円+税
TVCMであふれる健康食品やサプリメント、本当に効くかどうか、その判断はどのようになされるのか?そういった人には同書は役に立つと言えよう。 ある薬や食品成分が「効く」との論文は多いが、「効かない」との論文は少なかったり、マスコミの話題にならなかったりするので、その判断にはバイアスがかかってしまう。
同書では統計学的に有意差があると言える「メタアナリシス」法を基本に、グルコサミン、コエンザイムQ10、DHA/EPA, ヒアルロン酸、から、ニンニク、タウリン、ヒト成長ホルモン、イチョウ葉エキス、アロエまで30種ほどのこれらのサプリメントの効果について述べている。 これらは薬品ではないので、服用する本人が効くと思えば、他人には効果がなくても良いとも述べている。 ちなみに確実に一般人に効果が認められるのは、全死亡率を低下させるビタミンDと、免疫力アップの朝鮮人参等で、(私にはこれにプラスしてマカ。) なお、サプリには禁忌症もあるので、詳細は同書を参照していただきたい。
私は、頂いたまましばらく棚の奥に眠っていた人参酒を焼きシイタケとともに今後継続して賞味することにした。
「地球の「最期」を予測する。 ☆☆☆☆ ヘンリーポラック著 澤田博訳 イーストプレス1800円+税
COPにおける、地球温暖化の議論と、データねつ造騒ぎや、温暖化懐疑論をほぼ、一蹴する最先端で最も信頼性の高いと思わせる同書である。
批判されている諸問題についても、詳細にその問題点や事実関係を述べて一つ一つ積み上げている。 批判する声だけは大きな、無責任なTV番組でエコは無駄であるとか温暖化懐疑論を面白おかしく主張する中部大学の武田某がぶち上げる子供だましの論理の大部分を、中立的立場から世界の研究最前線を引き合いに出し、批判する同書は、平易な言葉使いながらも、揚げ足取りや独断的無知な武田の発言をやんわりと批判する。
私は武田が出演した番組を見たことがあるが、あのおとなしい世界的な研究者の明日香寿川さんが、一方的にブチあげる武田の発言にとまどっていたことを覚えている。 如何にマスコミは無責任であることも良く分かるのである。
「グレート・リセット」☆☆☆☆ リチャード・フロリダ著 仙名紀訳 早川書房 2300円+税
世界の注目を集める都市学者による(米国の)都市の未来像である。 大恐慌時代は、工業化(フォード経営など)で不況という時代がリセットされ第二次大戦後は、クルマ社会などハイテク化などで、リセットされた。 今回の金融危機は人類が経験する3度目の「大きなリセット」というのである。 米国の郊外にプール付きの住宅を持つというという、アメリカンドリームはついえ去ったという(今後は人の移動がスムーズに行くための、賃貸が主流に)。 もはや金融、財政政策で好況を取り戻すのは不可能と著者は言う。 必要なのは、大きなインフラ(といっても、道路整備等のことではない)の整備とクリエイテイブな人の能力の発揮が鍵を握るという。そして高速鉄道に結ばれる大都市とその周辺のみが発展し生き残るのである。 私としては、日本、常に日本社会はアメリカのあとを追うのが通例だが、この著者には、食料品、ゴミ問題などわが国に内在する問題点への視点がないのはやむを得ないが、自己所有家屋がリセットにならないというのは持ち家派としては残念である。
その他の書籍
「調律師、至高の音を作る」 高木裕 朝日新聞出版 700円+税
プロの演奏家は皆、自分専用の楽器を持ち歩き演奏するが、ピアノだけは会場備付けのGピアノを弾くことが多く、その調律は家庭用のピアノとは全く異なりまさに芸術。 整調、整音、調律のすべてが完ぺきでなければならず(そうでないと作曲者の想いや、ピアニストの心が聴衆に伝わらない)、コンサート チューナーと呼ばれる彼らは日本ではわずか数人ほどしかいないとのこと。 著者はすべての演奏会に至高の音を届けるために、スタンウエイを会場へ持ち込み最も適したチューニングを行うのである。 (私が想像していたのは、単なる調律で、温度、湿度までを考慮したより微妙な整調、整音が加わる)まさにピアニストの魂を生み出すもう一人の演奏家である。 私はまたひとつ素晴らしいプロの世界を垣間見てしまったのである。 ちなみに彼は、ここでかつて取り上げた「スタンウエイ戦争」の著者でもある。
「ニワトリ 愛を独り占めにした鳥」 遠藤秀紀 光文社新書820円+税
鳥インフルが猛威をふるっているので、こちらを。 鶏はセキショクヤケイという野鶏が改良されたという。 日本国内では3億5千万羽が飼育され、毎年6億羽(170万トン)が処理、出荷されているらしい。 廃鶏は1億5千万羽が700日目で処理される。 まさに肉と卵をうみだすスーパーマシンである。 換羽のときは産卵率が落ちるのでその期間は経済性が悪い。 そのため強制換羽という方法で強制的に短期間に換羽させ、孵化後160日から卵をうみ始め、2年足らずのうちに廃鶏として殺処分されるのである。(そのため、養鶏場内で鶏が死ぬのはごく異例なことであろう) まさに驚くべき養鶏の実態である。 同書は、鶏の系統についても詳細に描かれており、この1冊で巷ではニワトリ博士になれよう。 ちなみにブロイラーとは品種でなく総称であるとのこと(マングローブと同じ!!) 2011/2/22
「予想通りに不合理」 ☆☆☆☆ダン・アリエリー 熊谷淳子訳 早川書房 2000円+税
同書も人間の経済的不合理な行動を研究する行動経済学に関する入門書である。 先に紹介した「不合理な地球人」よりグレードはアップしている。 著者らはユニークな実験を行い。 人間が「予想通りに「不合理な行動」をとることを証明している。 人間は経済的規範と社会的規範の中で、心が揺れ動くなど、これまでの経済学では、説明できなかった人間行動が次々に明らかになっている。 (機内でアテンダントが、にっこり勧めてくれる無料のキャンデーは慎み深く1個しかとらないあなたも、おひとり様1個限りの特売には争って飛びつくのはなぜか? これがまさに不合理なのデス) 大部分の消費者は、知らず知らずのうちに行動経済学や心理学によって消費行動を操られ、おとりの広告や価格提示によってマーケテイングの餌食になっていたのである。 行動経済学を自在に操る企業にわれわれは騙されぬよう経済合理性を貫こう。
「高層マンション症候群」白石拓 詳伝社新書 760円+税
大地震の際に「高層マンション居住者が難民と化す」についてはすでにここでも取り上げたが、今度は10階以上の高層MSに住む住民には、そうでない住民に比べて統計的に明らかに、「早産や流産が多い。」「子供のひきこもりが多い」「高所平気症」など、大きな社会問題となる事例が紹介されている。 すでに欧州では子供のいる家族の高層暮らしを禁止したり、住まないよう指導している国々もあるのである。 私も、かつて高層MSの中層階に住んでいたが、最上階へと向かうエレベーターの中では非常に強いストレスを感じ、通路も外側を歩けなかった記憶がある。 ペントハウスがいくら見晴らしが良くとも、体が病んでは何もなるまい。 マンション購入予定者には必読
「潜入ルポ アマゾンドットコム」 横田増生 朝日文庫 880円+税
鎌田慧の名著にトヨタ自動車の内幕を描いた「自動車絶望工場」があるが、この著者は秘密主義で知られるアマゾンドットコムの配送センターに時給900円、通勤手当なし、雇用保証期間2カ月のパートとして潜入し、その現実を描いたものである。 勤務内容は日本の格差社会が、ここにもあるという現実と、出版業界の勢力地図を一変させたネット社会の利点を知り尽くしたアマゾンの戦略。 そして同社のコンプライアンスやディスクロージャーの不足についても描いている。(ただ、年度が少し古い) 鎌田慧には及ばずともネットを操る最近の人々でしか理解できないネット販売の仕組みについても実体験も描かれている。 どちらにしても社会の底辺や、弱小個人、中小企業は巨大なシステムには到底太刀打ちできないことが結果として明示される。 この流れでは、日本中からリアル書店が消えるのも時間の問題であろう。 ちなみに、前掲書はネット購入で、これはリアル書店で購った。 2011.1.27
「となりの車線はなぜスイスイ進むのか?」☆☆☆☆ トム・ヴァンダービルト 酒井泰介訳 早川書房 1800円+税
これも「不合理な━」での引用本だったので購った。 書名は安っぽいが、交通の科学の話題が満載。 如何に人間と車あるいは運転、渋滞、駐車との社会的、心理的関係が複雑で多様性に富むことがこれでもかという具合に具体例で描かれている。 渋滞を避けるために、新たに道を作るとさらに渋滞するとか、大規模店舗での駐車位置はどのように埋まっていくか、どうしたら安全運転ができるのか?等々まで、車や交通に関するエピソードがギッシリ。 自分の運転に即して読み込むとより実感が湧き、十分この本の購入コストは回収できること請け合い。 グンタイアリの行進が効率良いともあったが、なんとなくわかる気がしたのである。 ちなみに、かつて私の親を車に乗せて走行中、対向車と5-6台連続してすれ違ったとき「すごい、今日は渋滞している」と声をあげたのには驚いた。
「自分を守る経済学」 ☆☆☆ 徳川家広 ちくま新書
徳川家第19代の現役評論家が語る、これから起きる世界恐慌と日本の破たん、そしてその時、私たちはどのように行動すべきか?が後半2章の数十ページほどに記載されている。 文体は、優しく易しく丁寧で、まさにお殿様が、真摯に何の脅しも誇張もなく「この私に」破綻から生き残る術を教えてくれている感じが彷彿とする。 著者の人柄がわかるような好感の持てる内容である。 今まで読んできた、「日本破綻モノ」の中では、ムツカシイ理屈などどうでも良いが、最も著者を「信頼しても良いという気持ちにさせる」のである。 断言できない個所では、「〜と思われます。 〜でしょう。」と力まないところも嬉しい。 肝心の個所を私は10回ほども繰り返し読んだ。 私にしてみれば高名な学者先生や、自称プロの描く日本破綻よりも、より素人っぽい殿様の方が信じられる(信じたい)説得力である。 求めやすい価格でもあるので破綻を生き延びたい方にはおススメする。
その他の書籍
「ホーキング宇宙と人間を語る」 S.ホーキング他、佐藤勝彦訳 エクスナレッジ1800円+税
あの天才ホーキング博士も、なんともう69-70歳!になっていたのだ。 9年ぶりの著作とあるので手に取らないわけにはいかない。 内容は、中ほどまでは、歴史的なものを含めて、宇宙論の哲学的な感触のおさらいが量子論まで続く。 ここまでは慣れたもので私もスイスイと。 ここから、超ひも理論の解説とともに最新のM理論について述べられる。 どうも、GUT(大統一理論)は存在しないかのような感触の記載である。 数度読み返したが、このあたりで私の理解力はブラックホールに吸い込まれ蒸発してしまい、これ以上のコメントは困難。 5次元の超ひも理論とM理論が重なって構築され、類似の宇宙は我々の宇宙の他にも多々存在するというのだが、、、、
「知的余生の方法」 渡部昇一 新潮新書720円+税
あの「知的生活の方法」から40年近くたった。 結論からいえば、素晴らしいのは書名だけで、前著と同じく得られるものなど何もない。 この80歳という年齢になると、もはや「創造力」などカケラも見られないコピペに近い内容になるのだなあ、と逆に納得。 年はとりたくないものです。 無駄使いをしてしまった。
2012.1.11
「世界経済を破綻させる23の嘘」 ☆☆☆☆ ハジュン・チャン 田村源二訳 徳間書店1700円+税
小生を含め、漠然と正しいと思っていた政策や認識がまったく逆であるとの指摘がノーベル経済学賞受賞も近いと目されている著者の認識である。 たしかに、論理も整然としており、正鵠を射ているのである。 たとえば、「インターネットは世界を根本的に変えた」「資本にはもはや国籍はない」「世界は脱工業化時代に突入した」、「富者をさらに富ませれば他の者たちも潤う」「教育こそは繁栄の鍵だ」「経済の発展には小さな政府の方がよい」などは、すべて誤りと論破する。 特に私が驚いたのが、「インフレを抑えれば経済は安定し、成長する」が誤りとのくだりであった。 確かに、少なくとも常識のウソというのはよくあるハナシなので、関心ある諸兄には一読の価値があろう。
その他の書籍
「電線1本で世界を救う」 山下博 集英社新書700円+税
車のアースをたった1本の銀線で行うことにより、燃費が大幅アップ、排気も綺麗にという一見信じがたい事実が淡々と述べられている。 著者はオーディオの世界では有名な方らしいが、こんな簡単なことでエネルギー危機を避けれるのならなぜ普及しないのか? 何を恐れて、巨大車両メーカーから特許庁までが在野のたった一人の発明家を徹底的に叩き邪魔をするのか? あのピアノの輸入についてのたった一人の戦いを描いた「スタンウエイ戦争」 と同じパターンのようである。 ちなみに、私のオーディオ装置にも純銀のケーブルが使われている(とのショップの説明で、「ほら、音が澄んでいるでしょう!!」)なのだが、私には?である。 現代のエジソンになるかもしれない著者には、善意の応援団が必要なのである。 今後の推移に期待したい。
「イチローのバットがなくなる日」 長谷川晶一 主婦の友新書762円+税
いったいどんな内容かと思えば、資源の枯渇で、バット材に最も適しているといわれるアオダモの樹が消えてしまうという警鐘を鳴らす内容だが、いまいち問題の掘り下げ方が浅く、時系列の構成だが、読みごたえに乏しい。 それに肝心のアオダモの写真は幼樹1本のみ、植物学的考察もないのである。 次回作に期待する。
「買い物する脳」 マーテイン・リンストローム 千葉敏生 訳 早川書房1700円+税
下記に紹介した「不合理━」に本書の一部が引用されていたので購った。 曰く表面的にわれわれが感じているCMへの関心と、fMRIなどによる脳波の実際の測定値では異なる結果となり、CM効果がないどころか逆のケースもあるという。 これからは効率的なCMやブランドつくりには、「脳」そのものの反応を考慮しないとならないという論調。 確かにその通りであろうが、文章はあくまでも広告業界のそれであり、活字も大きく中身も薄い。 もう少し突っ込んだ証明と論理的考察が欲しい。 この本だけではヒット商品は宣伝できないのである。 2012.01.06
「不合理な地球人」☆☆☆☆☆ハワードSダンフォード 朝日新聞出版1600円+税
副題にお金とココロの行動経済学とある。 すなわち人間の(かつては合理的とされていた)経済的行動を心理面の観点と経済学を結び付けて説明を行う、行動経済学のいわば気楽な入門の入門書である。 枕頭の読み物としても目がさえること請け合い。 読者に対する日常的に遭遇することの多い簡単な問題が出され。自分なりの解答や感想を選択すると、続いて「経済学的な解説」が述べられる。 私の場合、大部分が不合理な回答を自分では正しいものと感じていたのであった。 スーパーのレジで一番早そうなレジを選んで並んだのに、隣の方が早く済んだ時の「不愉快感」はなぜ生じるのか?
「あぶく銭」はなぜ身につかないのか?等々 60個ほどの問題のすべての解説にナルホドと納得する自分がいたのである。 そういえば、ノーベル経済学賞も近年そのほとんどが、これらの理論に対して与えられているのであった。 私たちの経済的行動も、大手スーパーや広告会社にはすべて把握され好いようにもてあそばれていたのかも知れない。 価格も安いし、ご一読をお勧めする。
「次の大地震 」☆☆☆ 木村政昭 マガジンランド1200円+税
わが国では近いうちに必ず起こるであろう大地震。 予知がある程度信頼できるなら対策を講じてい置きたいと常々思っている私ではある。 地震予知の第一人者である著者は、小地震の震源域や火山噴火との関係や、独自の研究による「地震空白域」と台風の目ならぬ「地震の眼」そして、「時空ダイヤグラム」を基に、想定震源域と発生時期、想定マグニチュードを地域別に検討している。 これによると、政府の想定する東海地震よりはむしろ、富士山の噴火の可能性すらありということらしい。 もし同書の予測の地震が今後一つでも発生したら、我々は相当の覚悟で地震対策に取り込まなくてはなるまい。 ちなみに、釧路沖(2010年±3年M7.0)や東海沖をはじめとして、千葉県北東部では2011年±3年(M6.8)、東京湾北部 2012年±3年 (M6.5)、富士山噴火2013年±4年等々と予測が記載され。 こんなに具体的で大丈夫かとさえ思ってしまう。 恐ろしいのは能登西方沖でM8.0超の記載があることである。 ここは原発の近くである。
「超ヤバい経済学」 ☆☆☆ S.レヴィット他 望月衛訳 東洋経済新報社1900円+税
かつてここでも取り上げた本の続編である。 内容は前著にくらべ、よりスキャンダラスな事象へと範囲を広げて、統計経済学的な論拠から人間の行動が果たして合理的なのかどうかを砕けた言い回しからも、雑学ファンには嬉しい読み物にしてくれる。
世の中にには経済学の理論で説明できるエピソードがこんなにも多くあるいうことと、一般常識とのギャップが非常に面白いのである。 テロリストであることを隠すなら生命保険に入るべきとか、プール付きの大金持ちの家に小さな子供を遊びにやる方が、貧民街に住むピストルが放置されている家庭で遊ばせるよりも子供の死亡のリスクガ高いとか、酔っ払った時に歩いて帰るのと酒酔い運転で帰るのでは後者の方が安全?とか(本当はタクシーで帰るべき、あくまでも理論上のハナシ)、ジョーク好きには堪えられません。 いやはや経済学者はいつもこんなことばかり考えているのだろうか?
「ジャパン・ショック」 ☆☆☆☆ 山崎養世著 祥伝社新書 760円+税
読んでいて気味が悪くなるような、国債暴落世界大不況を、その可能性がありそうというのではなく、日本が「破たんを回避することはおそらく不可能」と述べ、プロローグで時系列で想定シナリオをドキュメント風に紹介しているのだが、幾度か読み返したが不気味な内容である。 国債暴落に関しては多くの指摘があり、以下でもすでに述べたが、特筆すべきは、我々がその時どう対処すべきか?が具体的に書いてあることでより真実味を増している。 まずは資源があり、安定しているC$,A$に財産を移し、その次はブラジル、インドへ。 株式などは新興国ものへ、ペイオフにも注意。 預金や株式は無価値になり、(ハイパーインフレと換金売りで暴落)、 エネルギーや食糧の自給すら困難となるので首都東京は維持困難。 雇用どころか、医療、福祉、警察、消防も崩壊。 世界規模での戦争すらありうるとの予測。 夕張市の全国版のさらに過酷な感じか? 巻頭に、ようこそタイタニック号へ、とあるのも落ち着かない。 10/28
「これからの正義について話をしよう」☆☆☆☆☆ マイケル・サンデル著 鬼澤忍訳 早川書房 2300円+税
NHK教育番組「ハーバード熱血授業」のほとんどををそのまま翻訳、文章化したものである。 政治哲学が専門のサンデル教授の講義があまりの人気でついに一般に初めて公開したとされるハーバード大学の授業で、確かに巧みな話術と、身近な題材に哲学の視点から問いを発し学生に意見を述べさせるというその手法に、映像は雄弁で、1時間の番組もあっという間に終わってしまうほどの魅力である。
久々に若い世代の学ぶ現代教養が身にしみ込むという感触である。 ベンサムの功利主義や、リバタリアンを超えた現代の「美徳」のもとでの「正義」について、TV番組の吹き替えだけでは理解不足の諸点がじっくりと読みこめる。 ハーバードの学生でなくとも、日本人の私が食事をしながらその一端に触れることができるのは何と幸せなことか。
私にとって哲学書などソフィーの世界以来である。 ちなみに、第一回講義ではほぼ満席の大講義室も、回が進むにつけ空席も少し出てくるし、スパイダーマン(彼もハーバードの学部生だったのだ!)も出席しなくなったのである。
どこの大学でも学生はほぼ同じであるとわかって一安心。 しかし、肌の色が異なる学生ばかりぎっしりというのもさすがアメリカと感心させられた。
どちらかというと、まずは先にTV番組を見る方が存分に楽しめる。
しかし、常々思っているのだが、大学テキストの原書というのは、TV番組でナビゲーターが手にしている「justice」もそうなのだが、翻訳ものと同じ内容のはずなのに、どうしてあんなに分厚く大きいのだろうか。 表音文字と活字の大きさに依るのか? それとも学生の目が悪いからなのだろうか?
「ユーロが世界経済を消滅させる日」他各種 ☆☆☆☆〜☆
最近、体調がイマイチで目もかすみ意欲がそがれてレビュー゚する気持ちになれなかったが、原因は 高血圧だった。 御同輩、健康には気をつけましょう。
さて、このしばらくの間ひたすら、日本の破産の可能性について考えてばかりいた。 国の借金が天文学的数字となり、ある日ついに国債の償還ができなって国債相場が暴落、株も暴落、金利が暴騰そして日本は破産という流れについてはすでに話には聞いているだろう。 そして私が知りたいのはただ一つ、原因や結果はもはやどうでもよい、どうしたら自分だけでも破産しなくてよいか、その方法を知りたいのである。
まずは「国債大暴落の恐怖」 堀川直人PHP研究所1300円+税 国際金融アナリストの彼曰く、この20年で自民党が無駄な公共事業などで500兆円が消えたことにより、何をやってももはや経済破たんする。 国内の投資家のカネは国債暴落の兆候が現れ始めると、海外へ流出。 国債にマルマル依存の郵貯銀行では取りつけ騒ぎが、と、映画仕立てで描く。ストーリ-はそうかもしれないが、肝心の私の財産の守り方の具体的記載がない。
ついで 「日本経済の真実」 ある日この国は破産します 辛坊治郎他幻冬舎952円+税では政治家、ニュースキャスター、評論家がこの国を滅ぼすのだ、暴論にだまされるな、との論調。 複雑なハズの国際経済をあの谷亮子にもわかる簡単さの論理で描く。 あほらしい。
次は、「ユーロが世界経済を消滅させる日」浜田矩子 フォレスト出版1400円+税 これは記載内容も専門的で、けっこうホンモノっぽい。 ユーロの危うさ、ギリシャ 財政破綻について、正確にしかも事前に予想しているが、今のところほぼ的中。 この著者(同志社大学大学院教授)の論調には注目する必要があろう。 私も何度も読み返した。
しかし、どの著者も、おおむね主要な論調は円が対ドル200円とかに暴落して超インフレ、最悪預金封鎖との論調なので、私など今のうちにドル預金が良いのではと思うのだが、最近、新100ドル札が公表された。(重要なのは発行日が未定なことである) この新ドル札ならニセ札もないだろうし、イザというときのお守りにしようとほぼ決断しかけたのだが、これが実はだれも予想もしない兌換紙幣!!となりそうだとの噂もある。 そうなればUS$の基軸は揺るがずゼッタイ安全と思いきや、兌換できるのは米国籍に限るのではとも。 日本人の私にはそれじゃあダメじゃん。
「金本位制復活」高橋靖夫 東洋経済新報社 1600円+税では、アメリカ復活のスーパーシナリオと称して以上の様な論調である。 荒唐無稽な感じもするが、十分にありそうな話ではある。
この著者の師匠が「2012年、世界恐慌」相沢幸悦他 朝日出版社700円+税の著者である。 この本では世界中が恐慌になってしまうという。 しかもご丁寧に、Xデイ以降のシナリオまで付録についているのである。 日本人は財産を守るために、ここでも海外投資に資金を回せとのご託宣。 私の場合には、円高の時をねらって、全財産をドルに換えて生活費の安い海外移住というのがベストであろう。 あとは新100ドル札の発行より国債暴落/恐慌が始まる時期が少しでも遅いことだけを祈るのみである。
「東大入試至高の国語第二問」 ☆☆☆☆竹内康浩 朝日新聞出版¥1200+税
現代国語の問題なら、たとえ解けなくとも読むことぐらいはできるだろうし熟睡の友には安い買い物と思ったのである。 まずは92年度の第2問。 は、金子みすゞの今では人口に膾炙した詩の大漁「、、、、、いわしのとむらいするだろう」と積もった雪「、、、、、下の雪はおもたかろ、、」を取り上げて、感想を述べよ云々。 意外と簡単そうな問題やなあと、解説を読む。
ところが、さすがみすゞの詩というか入試問題だからというか、少なくとも青少年に取っては実にふところが深いのである。 解説では「生と死」を真正面からとらえ受験生に問いかけているとある。
なるほど18,9のまだ子供に生についてならともかく死について観察させるのであるから、受験テクニックだけではそう片手間にはいかない。 はや老境のワタシだからこそ理解できるのである。
このように「生と死」を取り上げた流れは、ずっと続いて何年もまったく同じ流れで出題されていたとある。 しかし、この本は書名と違い受験生のためのものでは決してなく、日ごろほとんど考えることもなく、深く読み込むこともない「生と死」についてもう一度読者に考えさせ、日本語の美しさを語る、まさに入試問題を超えた随筆のようである。
私など眠くなるどころか、日本人の生と死の輪廻とみすゞや寅さんなどの文章や言葉の奥深さに久々に感動してしまいました。受験生にだけ読ませるにはもったいないのである。
画家の中島潔がイワシにのめりこんだのも無理がないように感じたのである。
「共感覚者の驚くべき日常」☆☆ リチャードEシトーウイック 山下篤子訳草思社1900円+税
書名だけでは何のことかまったくわからないのだが、世の中にはものを食べると指先に形を感じるために、「このローストチキンは、味が丸くなってしまった。 もっと尖った味にするべきだった」 「一定の音には一定の色が付いている」等々 まったく私の理解を超える感覚の持ち主が存在し、普通に暮らしているという。 この感覚はあくまでも比喩ではなく実際に感じるのだそうな。 (10万人に一人ほどはいるが、本人がこのことを口に出さなければ誰にもわからない。) そして、こういった感覚の持ち主を共感覚者と言うのだそうだ。
著者は共感覚研究の第一人者で、医学的な解明をも進めている。 あのカンディンスキー(音を色として感じ絵画にした)、アルチュールランボー(言葉には色が付いているという感覚)なども共感覚者であったとされる。 ふと気付いたが、ロートレアモンの有名なフレーズ「手術台の上でのこうもり傘とミシンの幸福な出会い」 というのも共感覚のなせるワザのような気がするのである。 ある種の薬物(LSDなど)は共感覚を引き起こしたり、強めるともされている。 人間は奥が深いと今更に感じるのであります。
「100年予測」 ☆☆☆ジョージフリードマン著櫻井祐子訳早川書房1800円+税
副題に世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図とあるが、歴史と、地政学と、統計数値等々で100年後までの世界の覇権予想をきっちりと行っている。 その予測の理由と論理も整然としており説得力がある。 まあ単純に言えば21世はまさにアメリカの世紀であり、対峙するのが日本、トルコ、ポーランド、そしてメキシコとある。 我が国以外はちょっと驚きの国名である。 中国など話題には出てこないのである。(20年代には多くの論者のように分裂してしまうとの予測、さらにはロシアも崩壊とある。)
そして、アメリカと日本、トルコの間で戦争も起きる(なぜか日本が宇宙からアメリカに奇襲攻撃をかけるというストーリー)が。 兵器の進歩でピンポイント攻撃が可能のため戦死者は激減。 (アメリカは、建国以来その20%もの期間が常に戦争状態であることからも今後も戦争が起きても当然とも指摘)
増加している世界人口もやがて頭打ちになり、次世紀末にはメキシコが台頭するという。 21世紀も後半についての記述も多いが、自分の年齢を思うとほとんどどうでもいいこと、。 ただ2030年代までは結構的中する予測かもしれないので、このころにも元気な人には多少参考になるかも。
「正倉院ガラスは何を語るか」☆☆☆☆ 由水常雄 中公新書 800円+税
私の知る限り、我が国でトップのガラスの専門家が正倉院のガラス器について自ら実際に制作復元したうえできっちりと歴史的背景や生産地等について論証している。 これによると、これまでの宝物調査による調査班などの説明はマチガイだらけであり、大幅な修正が必要と断言する。 当然であろう、著者は考古学的に、学術的にだけでなく、自らがガラス作家としての第一人者の誇りを持って淡々と述べているのである。 あのもっとも人口に膾炙している白瑠璃椀が意外と制作は簡単で世界では2千個ほども現存するらしいとかが書いてありちょっとビックリ。 良く知られている丸輪模様の瑠璃の高杯(青色のワイングラス)が再現が難しいほど非常に高度な技術であるというのも初めて知った。 また正倉院のガラス類の数量はは明治5年に突然大幅な増減が認められるとのことだが、いったいどこへ流出したのであろうか? 古いガラスは色味がとろんとして黄みを帯びて実に味わい深いのだが、これはガラスの微量成分の酸化第一鉄が時間をかけて還元され黄色くなるためとのこと。 ナルホド ナルホド。
ちなみに、故松本清張氏がシルクロードを旅したときにペルシャで入手した白瑠璃椀(もちろんギラーン州出土で銀化したもの、その昔TV ドキュメンタリで見かけたもの)は私の記憶では当時わずか150ドルほどだったと記憶している。 今どこにあるのであろうか、小倉の清張記念館にでもあるのだろうか?
「20011年新聞・テレビ消滅」☆☆☆☆ 佐々木俊尚 文春新書 750円+税
非常に挑戦的だが十分にありうる感じのする書名である。 部数の減少と広告収入の激減で新聞/テレビのマスメディアが大きな曲がり角にきているのは、すでに米国で、多くの新聞社が倒産したり、危機となっている状況が知られているし、私にも実感としてわかる。
新聞などの一般生活上での重要性は著しくさがり、減収となるのも構造的なものなのだろう。 著者は、米国でのこれら事象がこれまでの経験上日本に3年遅れでやってくると断言する。 ネットのもたらす影響の本質を理解できない日本のマスメディアの経営者たち、さらには地デジ化がとどめを刺すというのである。 具体的には、マスメデイアの独占だった@コンテンツ(番組などの中身)、Aコンベヤ(TV/新聞/CD書籍など)、コンテナ(伝送方法つまり販売店など)のうちAとBをネットに奪われてしまうというのである。
A、Bはネット、地上波デジタル、YouTube,i-Tunes 等々、これまでのマスメディアの持っていた主導権がすべて消滅するという。 ご同輩諸君、時代がまたさらに一気に変わるのだ。
ちなみに、他著での記載だが、生き残りをかける米ABCなどはFOXらと組み、Huluという配信サイトを立ち上げたが、これがさらにTV放送市場を駆逐席捲すると容易に想像がつく。
PS フルへの感染が嫌で書店には、ここのところ一切足を運んでいなかったが、もはや再読ばかりじゃ我慢の限界。 完全防備で大型書店に開店と同時に飛込み、手当たりしだい吟味し、さっさと退散。ただN95マスクは息苦しくて、長時間着用は困難。
「救命センター当直日誌」☆☆☆☆ 浜辺祐一 集英社文庫 514円+税
簡単に言うと、あの墨東病院、つまり代表的な日本版ER(救急救命室)勤務の日常を、良い意味で客観的に、しかも持って回った感情表現もなく、救急治療の現場に即して書き上げている。 TV版よりも、より実践的?でリアルな現場である。
スプラッターの不得意な気弱な人には、刺激が強すぎるかもしれないが、臨場感ということでは半端でなく迫ってくる。 また症例やケースごとにどこまで救急治療が行われるべきかの限界も考えさせられる興味深い一冊である。
まさに、寝る暇もなく毎日のように血しぶきを浴びながら、瞬時の判断と一刻を争う治療に専念するスタッフには医師としての本能的なモノが何かがあるのだろう。
話は飛ぶが、私の空蝉としての職業、公認会計士の肩書は、Certified Public Accountant 略称CPAというのだが、なんと救命治療の現場ではCPAとは Carido Pulmonary Arrestの略でなんと「心肺停止」のことだそうな。 ぎょえぇーつ。 あまりのショックで心肺停止となりそうでした。
「格安エアラインで世界一周」☆☆☆ 下川祐治 新潮文庫514円+税
これは格安な料金で顧客を運ぶLCC(Low-Cost Carriers)といわれる航空会社を利用しての世界一周の体験記である。 安い運賃の(著者なりの)定義は、飛行時間4時間で運賃約1万円ほどという。 安いだけあって、機内食は原則なし、あってもカップヌードル、しかも有料、座席の間隔は非常に狭く、切符すらほとんどない。 キャンセルは一切不可。 扱う旅行社もないのですべてネット上で予約/購入するというまさに時代が生んだシステムである。 よってネット環境とノートPC持参でないと搭乗すら満足にできないのである。 あげくに、搭乗口などもはるか遠方だったり(20km先というのもあるそうな)、著者は20数万円で世界一周を成し遂げているが、これからはこのような仮想空間でのチケット購入が一般的になるんだろうなあ。 英語が必要になるわけだ。
私事だが、先日用向きがあり上京した際の一泊2日のパック料金の明細を見て目を疑った。 帯広→羽田間のJAL航空運賃がなんと2千円!!となっていたのである。 こりゃあJALも間違いなくLCCだったのだ。
「傷はぜったい消毒するな」☆☆☆☆ 夏井睦 光文社新書840円+税
副題:生態系としての皮膚の科学
私の子供のころは、すり傷と言えば、オキシドール(過酸化水素水)をつけ消毒した。 泡が傷口から吹き出し、それは見るからに殺菌していると思わせるような感触だった。 そして赤チンの時代から無色のマキロンへとうつり、何と、標題にあるように「消毒するな」である。 まさにパラダイムの変換、驚天動地である。 同書によると、火傷や傷には、無色ワセリンをたっぷりとぬりこみ、一般家庭にいくらでもあるラップ*で包むだけで、痛みも消え、治りも著しく早いとのこと。 まさにオドロキ。 確かに、口の中の傷は消毒薬を塗らずとも治るし、火傷した際のあの痛みやひりひり感が、この治療法ではすぐになくなるというのも嬉しい。 医者側の問題としては、火傷専門医がもはや不要になってしまうということらしい。 今後の推移を見守りたいものである。 なお著者は消毒とガーゼによる治療撲滅のため「新しい創傷治療」というサイトを開設している。
*より効果的な市販されている被覆材専用のものとして「キズパワーパッド、 プラスモイスト」の二つがあるとのこと。
PS このレビューでも取り上げた「高濃度ビタミンC点滴療法」だが、なんと小生の住む帯広市内の医院でも最近開始され、私もアンチエイジングとガン予防のために、すすんで点滴をを受けることにした。 しかも著者の柳沢厚生先生にもお会いでき、お話も伺った。 おまけに著書にサインも、これはホンモノの意を強くしたのである。 なお私の点滴体験はまたご報告します。
「ハチはなぜ大量死したのか」☆☆☆☆☆ R.ジェイコブソン 中里京子訳 文藝春秋1905円+税
2006年秋から米国ではミツバチの巣箱の数が激減しているという。巣箱から出て行ったままそれきり帰ってこなくなってしまうのである。 これは蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder CCD) と呼ばれ全米の養蜂業者が壊滅するのではとも感じられる。 CCDの原因が、ミツバチヘギイタダニというダニなのか、未知のウイルスか、農薬や抗生物質の影響か温暖化か、免疫の弱体化なのか次々に容疑者があげられるが、はっきりしない。 免疫系を徐々に破壊する複合汚染の可能性もあり、読み進むにつれ犯人探しの謎解きにグイグイ引き込まれる。
たぶん生態系システムの崩壊がCCDの主原因なのであろう。 ならば、もはや全地球的にも手遅れなのだろうか? ミツバチはもう野生生物というより、蜂蜜採取機械、産業昆虫なのである。 ごく安価なコーンシロップを与えられて何千キロも移動し、こき使われる?のである。 著者は断定はしないが、カーソンの沈黙の春の昆虫版として強く世界に警鐘を鳴らしている。 現在受粉昆虫が絶滅したことにより、ヒトの手で受粉作業を行っている果樹園などが世界中にあるという。
たしか日本でも、サクラソウが受粉昆虫が農薬などでいなくなってしまい絶滅の恐れがあるとのニュースを見たことがある。 虫媒花による果実を私たちはいつまで食べることができるのだろうか?(四川省では蜂が絶滅し、人間の手で梨に受粉作業を行っている。 またカリフォルニア アーモンドなどはそのうち口に入らなくなるのかもしれない。) 科学ものでありながら、推理小説のように警鐘を鳴らす本書。 ほとんど知らなかったミツバチの生態や養蜂業者の実態が非常に興味深い。 オススメである。 ちなみに、中国産のハチミツはやはりヤバそうだ。 素性のわかる蜂蜜以外は食べたら危険!! うぅむーつっ 恐ろしい時代なんだなあ。
原題「 Fruitless Fall」実りのない秋
「日本の戦争力」☆☆☆☆ 小川和久 新潮文庫 552円+税
軍事関連では江端兼介氏の冷徹な分析力と論理構成が心地良いので好みだったが、本書は坂本衛氏が聞き手となっての著者とのQ&Aそしてここがポイントと短くまとめている点が実にわかりやすい、わが国の自衛隊は、海自の対潜水艦と掃海能力は世界最高水準で、逆に揚陸能力は赤子に等しい、つまり専守防衛そのものとも言えるとのこと、政治家やマスコミなどはあまりにも自衛隊の能力についての知識に疎く、お粗末としか言いようないとも述べる。一方で北朝鮮のミサイル問題は、話題にする必要がないほど些細なことという。 もし日本にミサイルが1個でも落ちたら北朝鮮の国そのものが壊滅するから、心配無用とも述べる。 また憲法9条と自衛隊との関係もきちんと整合性が取れるとも述べる。 最低限の日本の防衛力、軍事力についての入門書としても良い指針となろう。
「ひとの最後の言葉」☆☆☆☆☆ 大岡信 ちくま文庫800円+税
独歩、漱石、芭蕉、子規、天心の辞世の句や手紙、遺書など死を意識した時の文章をまとめて心の機微や死にざま=生き様について解説したものである。 序章の部分だけでも十分に読み応えがあり満足感に浸れるのでオススメである。 アラカン世代(アラウンド カンレキをこう言うそうな)の私にはちょっとした憧れさえ感じる彼らの死を迎えるための日々である。 「死ぬのはいつも他人」という言葉には深い意味があるのである。 うぅむぅう 私も来るべき日のために、漢詩と句作に励む必要がありそうだ。 こりゃ忙しくなるなぁ。 実に安い買い物だったといえる。 下記のリンボー先生の著作とはエライ違いである。
「昭和天皇のお食事」☆☆☆ 渡辺誠 文春文庫 524円+税
B級誌上グルメを自認する小生としては、一度は見てみたい(味わいたいと言わないところが奥ゆかしいが)のが天皇が召し上がる食事である。 まず、朝ごはんは和食と思いきや、オートミールか市販のシリアルとのこと、うぅむぅう、うらやましくもなんともないのである。 お好きだったのが「鰻のかば焼き」、落花生は数粒づつ召し上がり(もっと食べたくとも出してくれないのでは?)、納豆はねばねばが取ってある(ほんとかいな?)。 お立場上のこともあろうが、出されたものは残さずにすべて召し上がる。(こりゃ辛いなあ!)まさにお人柄がにじみ出る様な著者の筆致である。 ただ料理部門(大膳という)総勢50人もの料理人がおひとりのためにつくるのだから そのこだわりは尋常じゃない。 大根千六本も寸分たがわず同じサイズ、玉ねぎのみじんも同様、一人前を準備するのに、そのウン十倍も作った中から選別するようだ。 まるでゴルゴ13が狙撃する銃弾を選ぶときや錦鯉の選別くらいの狭き門?である。 メニュー自体はそこそこ質素だが、外観的にはパーフェクトな食事と云えよう。 著者は長年昭和天皇の料理番として仕えてきたお方だが、時折先輩から受けた酷いイジメについての記述が切ない。
「かくもみごとな日本人」 ☆☆ 林望 光文社 1500円+税
私のことかと思ってつい手に取ってしまった。 まずは活字がとても大きいのがうれしい。(つまりは正味内容がごくごく少ない) 次いで普段あまり使わない漢文調の字句が目にとまり、私の知識欲をくすぐる。(それだけ私めが教養不足ということか?)、 人の死を表す美しい表現も数多くみられる(ただし、前半のみ、後半はなぜか流れてしまう)、 新聞の夕刊コラムに連載されていたというので字数に限りがあるので、一人ひとりのエピソードが短く読みやすい(一方で短すぎて物足りない部分も数多い) 同書に取り上げている人数そのものは数多いが私の存じ上げない歴史に埋もれた人が多いのもついでに面白くない(恥ずかしながら知っていたのは、諸九尼、松浦武四郎、他ごく少数、) うぅーむぅ さすがリンボー先生博識やなぁと思いきや、専門が書誌学ということだから、このくらいアタリマエの話か、軽い連載コラムを集めただけのものは、いくら書名が目を引いてもその程度のものなのかもしれない。 残念。
「恐慌第2波」 ☆☆☆☆ 門倉貴史 角川ssc新書760円+税
副題に「世界同時不況を日本が生き残る道」とある、なるほど参考になりそうだ。 前半の多くが、この恐慌の諸外国の具体的な解説であり、後半に我が国の現状について解説する。 さて、日本はサブプライムというよりは、米欧などへの輸出の急激な落ち込みが主要因であるから、国内需要の下支えの政策がまずは必要だが財政面では限界がある。 米の住宅価格が下げ止まらなければ、さらに玉突きで日本の景気回復は遅れる。 しかもドル安円高となれば、ドル建ての米国債が多い外貨準備高が目減りしさらに悪循環となる。 著者は米国が、デノミを行う恐れ!!!が十分あると警告する。 そうなれば日本の外貨準備が吹っ飛び、日本は破滅する。 今後の日本は、脱欧米で新興国向けの貿易に力を向けるのが中長期的にも生き残る道であるという。 米国追従べったりの小泉竹中路線はやはり明白に誤りであったとも断罪する。 そして成長力の差から中長期的には、新興国の債券、株式への投資が効果的というのである。 ただ、私の場合には、短期的でなければ意味がないのである。せめて米国のデノミ前に。
ちなみにVoice+で伊藤元重氏は、何と言っても米の景気回復こそが、世界的市場規模から見ても一番重要という。 何しろ購買力がケタ違いに大きいのだから。
「金融資産崩壊」 ☆☆☆☆ 岩崎日出俊 祥伝社新書 760円+税
著者はメリル、リーマンなどでマネージングダイレクターなどとして活躍した実務家である。そのため、非常に説得力がある。 さて結論を。 1929年の大恐慌と今回は酷似しているというが、問題なのは1929年当時株価の下落は、数ヵ月後にいったん持ち直したかにみえたが、その3年後までずるずると下落が続き、元に戻るまでなんと25年もかかったという事実である。 そして戦争を経て初めて相場は回復したという。 繰り返そう。 今は、その時に酷似しているという。 あぁ〜、小生の生きているうちにはもはや株価は戻らないのである。 じゃあ、今株は損切りすべきかどうか? 著者曰く、「買値は忘れろ」そして、今の株価であなたが「今は買い」とあなたが思うのなら持ち続けても良いだろうとも言う。 ご参考までに。 株価はもう上がらないのか? それはオバマの経済政策がドルの信認を得ながら(わたしゃ無理と思うが!)功を奏すかどうかにかかっているという。 それはこの2009年であり、オバマの演説にある defining moments(正念場?)である。 最後にエピソードを、大恐慌時代に生きたアルカポネ曰く、「株に手を出すつもりはない。 危険すぎておれには向かないね」
「最強ウイルス」 ☆☆☆ NHK出版 1000円+税
新型フル関連の書籍は大量に出回っているが、これらはほとんど同じ内容であるが、ただNHKのものがより学術的な検討もあるので、多少は深く知りたいという方にはこちらを薦める。 さて、H5N1の突然変異が起こすであろう、パンデミックは、「起こるか起らないかでなく、いつ起きるかだけが問題」との認識はほぼ世界共通とのこと、ただし未知のウイルスであることは間違いないので、伝搬力や、強毒性かどうかもまだ定かでないという。(弱毒性の可能性が高いという学者もいるし、ブタ-ヒト感染のほうが危険というのもある。) まずは今、流行のインフルエンザとはまったく別物との認識が必要とのこと。 類書を含めて、わかったのは、日本は同対策で世界的にも大きく遅れているということ(政府のいつもの無策)、地震や台風と違い日本全国(または世界中)がほぼ同時に被害を受ける可能性があるとのこと、そして、食料などの備蓄が必要であるということである。 医療機関だけでなく商品等の流通や交通もマヒするので、パンデミック時には相当の想像力が必要な事態となろう。 小生、昨年末から類書らにあるように、パンデミック時のために最低限必要な食料品などの備蓄の態勢に入った。 N95マスク、缶詰、シリアル、スパゲッテイ、それに大量のアルコール類(もちろん飲む方)、これで、2週間は終日飲んだくれて一切外出しないで済むから、この未曽有の時を乗り越えられるハズ、と思った矢先、ぐぐぅぇーっ、インフル万能ワクチン開発の報道が!!なんてこった、これでは備蓄が無駄になってしまう。明日からせっせと飲まなくてはなるまい。
「大西洋漂流76日間」 ☆☆☆☆ s.キャラハン/長辻象平 早川書房 760円+税
突然の衝撃でヨットが沈没。(鯨に襲われたらしい)、ゴム製の救命いかだでたった一人で大西洋を漂流すること76日間。 極限状況の中、ヨットマンとしての精神力で毎日が日記のように記述されている。 暴風あり、燃料なし、飲み水なし(海水を蒸発させて何とかギリギリの水を作る)、食料なし(何とか捕まえたシイラを生でかじり、残りは腐りそうになるが保存する)、皮膚がぼろぼろになる(当然だろう)、チューブに穴があき空気が漏れていく(ありったけの知恵で修理する)という想像を絶するサバイバルの日々が延々と続く。 毎日のようにシイラやサメに襲われ、沈没寸前となる等々。 表題に日数が書いてあるので読者は発見されるまでの日々を確実にたどれるが、本人にとっては先が全く見えない地獄の日々。ヨットマンの生への執着にはただただ脱帽の一言 酒とおモチの日々の小生にはハードすぎるのであった。
「ストラディヴァリウス」☆☆☆ 横山進一 アスキー新書 890円
値段の高いことと、ニスに秘密があるらしいくらいしか知らなかったのだがようやく詳細に知ることができた。結論から述べよう。音の秘密は著者によると、やはり「300年という時間ではないか」と推定する。 検証はできないが、さもありなんである。 著者は写真家だが、スト━の魅力にひかれてヴァイオリン作家となったというのもすごい。 現存するのはヴァイオリン約520 台、ビオラ(20台)やチェロ(50台)もあるという。 でもその多くが表に出ないまま(資産家に)秘蔵されているらしいとのこと。日本だけでも80台!はあるそうな) なるほどヨーヨーマの音は違う気がするのである。 カラー写真もふんだんにあり、さすが本物は美しい。 しかし、私が感心したのは300年も前の人にも関わらず、本格的に制作に打ち込んだのが60歳からで93歳ころまで次々に名品を送り出してきたというところに心底脱帽。 世のオジサンの見本となりうる元気さと長寿である。 ちなみに私も混乱していたが、━ヴァリが名前で、━ヴァリウスが名称とのことらしい。
「雑草のはなし」 ☆☆☆☆☆ 田中修 中公新書 840円+税
我が家の庭にはびこる多くの雑草たち、名もわからぬものも多く、雑草図鑑を片手に、いっとき判別するも、それだけではすぐに名前を忘れてしまい「何だっけ?」ということになる。 そこで同書が目にとまった。 同書では一般的な雑草をカラー写真+楽しく知的な解説や雑草にまつわるエピソードでしばし時を忘れさせてくれる。 タンポポは通算3日間のみ開花し、開花の引き金は日照と温度により、開花後10時間で花を閉じるそうで、私の記憶の教科書の記述は間違っているらしい。 日本の彼岸花(まんじゅしゃげ)はすべて3倍体で種ができず、昔々たった一本から始まったいわばクローンという。 中国には2倍体の種をつける同種があるので、名前からしても遣唐使がたまたま3倍体を持ち帰ったのかもしれないと私の想像。 (ちなみに、トカラ列島悪石島にはミナミイシガメという、中国産のカメがいるが、これは京都にもいて、こちらは遣唐使が持ち帰ったことが分かっているらしいのでトカラでは難破した遣唐使船があったのではと千石先生のハナシ(からのさらに受け売り) また、変わった名前の雑草も知った。 ママコノシリヌグイにアキノウナギツカミというのもあるそうな。(恐ろしや、ともに茎などに痛そうなトゲがあるという) それにしても雑草といえども実に奥が深い!
「苔とあるく」 ☆☆☆☆ 田中美穂 wave出版 1600円+税
著者は倉敷で「蟲文庫」なる古書店を営む、長いお下げ髪の女性で、(酒にも強いはず)、清楚で知的な風貌は雨上がりの苔のように上品である。 苔に関する本は数が少なく、楽しみとしての蘚苔類の知識を私たちに与えてくれるのがうれしいのである。 そして多数の写真やイラストもそして、小ぶりな本のサイズもごく感じよい。 身近な「暮らしの中の、小さな理科体験」、「すぐ、そばにある、きれいでおもしろいもの」と帯にあったが、その通りである。 ページをめくると、つぎつぎに苔のみずみずしさと楽しさが漂ってくるのである。 ちなみに、彼女の所属する「蘚苔学会」にはクマムシの研究家も多くいるはずで、クマムシ好きの小生としては蘚苔学会に参加したくなったのである。(、余談だが「クマムシを飼うには」という本も出た。こちらもオススメである)
「絶対帰還」 ☆☆☆ クリス・ジョーンズ著 河野純治訳 光文社2300円+税
スペースシャトルコロンビア号が地球への到着直前に空中分解したために、地球へ帰還する手立てがなくなってしまい、国際宇宙ステーションに取り残された3名の乗組員が急きょ、ソユーズで無事帰還するまでの一連を描いている。 嬉しいのは普段われわれが知ることの少ない宇宙飛行士の細かく具体的な日常と宇宙での生活について書かれていることである。 どうも美化されることばかりではないようだ。 無重力の世界である、想像していただきたい、「ウンチ、歯磨き、洗濯」! なるほどけっこう大変なのである。 中には宇宙船内でストを行った飛行士もいるのである。 ただ私が最も気になった箇所は、宇宙遊泳中にチリなどが衝突して宇宙服に小さな穴が開いた時の情景(推測)の描写である。一部を引用する。
・・・空気の勢いはすさまじく、鼻はもげ、歯は吹き飛ぶ。(中略) 全身のすべての細胞に含まれる水分が一滴のこらず水蒸気になり、体が通常の2倍にまで膨張し、眼窩から眼球が押し出され、皮膚は張り裂け、外耳道は海になる。 水分は日なたではほぼ一瞬にして沸騰、し日蔭では一瞬にして凍結する。 胃に溜まっていたガスが爆発し、胃もろとも横隔膜を吹き飛ばし、残った肺を破壊する・・・云々 宇宙医学の専門家によると「医療的処置の必要性は排除される」のである。 私はここの描写で一気に目が冴えてしまい幾度も読み返した。 宇宙飛行士はなんとも大変な職業である。
「無人島に生きる十六人」 ☆☆☆☆ 須川邦彦 新潮文庫400円+税
R.クルーソーの日本人版というか、実際に起こった無人島での日本人の漂流記である。 さすが小説とは違い遊び事ではない事実の重みは私を惹きつけるのである。 明治31年乗組員16名を乗せた漁業調査船流睡丸はハワイ沖で大しけにあい、ミッドウエー島近くのパールエンドハーミーズ礁に漂着、飲み水と燃料の確保に苦しみながらも、だれ一人欠けることなく無人島生活を乗り切り日本に生還した顛末を描いたものである。 彼らは帆布をほどいて網を作り魚をとり、1斗缶を利用して蒸留水を作る、亀の油で燈明を作る等々さすが、日本男児、海の男である。 彼らのすごいところは、雨の日など茶話会を開き国に戻った時のことを考えて、時間が許すと若い船員には年長者や識者が学問も教えているということである。 しかし現実の漂流となると、病気への対応と見知らぬ食糧らしきものには苦労するのである。 ちなみに、彼らの 主食は正覚坊(アオウミガメ)でいくらでも取れたらしく、亀牧場まで作ったとある。 またアカウミガメとタイマイは不味いとのこと、人間を全く恐れぬ野生の海鳥やアザラシとも触れ合うほど仲良くなったともある。 ちなみに、文政3年の金華山沖には何千頭という大鯨が、べたいちめんに、いぶきをしていたので、アメリカの捕鯨船団が大挙してやってきたとも書かれている。 結局何のかんの言いながらも、彼らが資源を喰いつくしたのだ。
ちなみに、アオウミガメというのは「脂肪が青い」のでそう言うらしい、亀甲の色ではないのである。
「法廷会計学VS粉飾決算」☆☆☆☆ 細野祐二 日経BP 2200円+税
先にもご紹介したことのある、同業ながら小職など足元にも及ばないほど優秀な公認会計士の著者の近著である。 同書によると、日興コーディアルのベル24というSPCを利用したる総額3千億円にも上る非常に悪質な粉飾(でもなぜか?わずか5億円の課徴金だった。) 彼は独自の分析で日興の粉飾を暴きだし、告発し白昼に引きずり出したのである。同著では公表されている実際の財務データをもとに至極明快に指摘する。 同時に彼は日本航空が簿記を学んだことのある人間なら簡単に理解できるような粉飾会計処理を行っていることも指摘している。 名づけて「空飛ぶ簿外債務、疑惑の翼」、日航の株を持っている方は本書必読、早くしないと紙屑になってしまうかも。 このほか、ホリエモンによる一連の粉飾についてもそのカラクリについて緻密に分析している。 また一方で、司法が=ほとんどの裁判官が、会計の知識にまったく疎いことを厳しく指摘する。 これで経済事件が審理されては粉飾よりはるかに悲劇である。 彼のように優秀な人物が、たまたま検察のメンツによる餌食にされそうなのは日本にとっても大きな悲劇である。
「北京大学てなもんや留学記」 ☆☆☆ 谷崎光 文春文庫619円+税
題名からして就寝前の軽い読み物のつもりだったが、途中から目がさえてきた。 同書は著者(女性)が北京大学(略称北大)へ留学した際の体験談である。 行間からは中国人恐るべし =一筋縄ではいかない =裏では何を考えているか分からない =国民に正しい情報がまったく伝わっていない、との感触が強く漂ってくる。 たとえば、官僚などが「赤包(ホンパオ)=わいろ」をもらうのは当然のことと言い切る学生たち、表と裏ではあまりにも違う性格、すきあらば浮き上がってくる反日教育の影響、共産党による言論統制などなど、ハードカバーものの論文には決して描かれない、学生と教授たち、その周辺の人々の中国人の心の底の闇を「明るく」めげないで描いている。 お隣さんとして親しく付き合っていきたい中国ではあるが、中国人よいい加減にしてくれ、目を覚ませと著者は暗に叫んでる。 オリンピックでの中国政府の対応を知る限りやはり共産党独裁政治がすべての元凶であることははっきりしているようだ。 困った隣人の体制である。
「人類が消えた世界」☆☆☆☆ アランワイズマン著 鬼沢忍訳 早川書房2000円+税
この本は、ある日突然、全人類が消えてしまったと仮定した後の地球はどうなるのかを、研究成果を交えて綿密に想定したものである。 SF近未来小説とみなしても非常に面白いのである。 同書によると、木造建築はわずか50年ほどで朽ちはて始め、鉄筋コンクリート建築も数百年で温度差による膨張と収縮で割れ目に水がしみ込み崩れ始めるらしい。 数年以内には野生の動植物は急増し生物の豊かな時代となるというのである。 ただ廃プラスチックは数万年以上、核廃棄物については数十万年後も影響が残るという。 人類が滅亡するのは、生命体としての地球にとっては最高のプレゼントだが、廃プラ類と核廃棄物だけは何とか始末してからでないと汚点を残すことになるのだろう。 どちらにせよ、そう遠くない将来には人類は滅亡するのだろうから、跡を汚さずに消え去ってほしいものである。 ちなみに、子供のころには人類なきあとはゴキブリとドブネズミが地球を征服するかも知れないと聞かされたような気がするが、どうもそうはならないらしい。
北海道日高と十勝を結ぶ天馬街道、その浦河よりの「春別」の橋のたもとに手打ちそばの店「春別」というのがある。 普通の人なら立ち寄るのを躊躇するに違いない店構えだが、そこの「ツブ昆そば*」はまさに今まで食べてきたそばはなんだったのかと思うほどの絶品、私の半分溶けた人生の中では初の味であった。 私の住む町から120km/往復4時間かけてもまた何度も食べに来たい店である。 無条件、手放しで、絶賛!!
* 詳細はあなたがこの店に立ち寄ったときの感動のために省略するが、勇気をもって躊躇することなくノレンをくぐってほしい。 感動があなたを待っているはず!! 手打ちそば春別01462-8-2011
「資源世界大戦がはじまった」 ☆ 日高義樹 ダイヤモンド社 1400円+税
このところ原油関係に関する本をどっさりと買い込んで一気に並行読みを行った。 全体的な内容はほとんど差がない。 原油高騰の理由は、技術革新もあるがやはり資源の枯渇が見えてきたこと、中国などの消費拡大、地政学的思惑、投機筋の介入とどこもほぼ同じ論調である。 新エネルギーはまだまだ代替にならず、安価になる状況には全くないことだけがすべてで一致している。 この書名を取り上げたのは特に理由はない。 著者の論調はいかに私は、世界の著名人と親しいのか! 私の入手する情報は貴重で精度も高くその指摘と判断は正しいのだとの雰囲気があまりに目立ったからあえてここで取り上げたのである。 なんじゃこりゃあと思いながらも読み進めたら、終り近くに次期大統領候補者は、ヒラリーがほぼ確実、共和党はジュリアーノだろうとの記載がある。 世界的なジャーナリストともなるとこりゃあ、なかなか大変ですなあ。 しかし1点だけナルホドと思った下りが。 核爆弾開発はもはや必要ない。精度の良いミサイルがあればこれから建設が増加するであろう原発に向けて打ち込めばよいのだから、安全保障問題は劇的に変化する云々。 怖い話ではある。
「生命保険の罠」 ☆☆☆☆☆後田亨 講談社+α新書 800円+税
またもや☆5つである、今までこのような本がなかったことが信じられないほどのインパクトある本である。 元生保の営業マンだった著者が懺悔とともに欺瞞だらけの業界を切っているのである。 先に皆様にオススメした宝石の裏側同様に、如何にTVコマーシャルで見かける保険勧誘がウソに満ち溢れているのかが満載。 私も、早急に自分の保険を徹底的に見直すこととした。 今、生命保険に入ろうかなどと考えているあなた、まずはこの本を読むべし!! もちろん莫大な保険料を何の疑いもなく払い続けているあなたもそうだ。 それを考えるとこの本には莫大な価値があると断言できる。 今すぐ書店へ直行すべきである。 あなたはきっと、この私のアドバイスに感謝するはず、そして知り合いにも実態を伝えよう! 御同輩よ!保険会社にだまされるのは今日限りにしようではないか。 まだ早いが今年のベストワンかもしれない。
「失われた時を求めて-第1巻コンブレー「スワン家の方へ第一部」 ☆☆☆☆☆ M.プルースト 翻案、画ステファヌ・ウエ、中条省平翻訳・解説 白夜書房 2800円+税
驚かれたでしょうアータ、まさかとお思いでしょうアータ、でもホントです。
私の残された日々の目標のひとつに、古今東西の著名映画のすべて鑑賞、クラシックの名曲すべての鑑賞と、「カラマーゾフの兄弟」、「失われた時を求めて」、そして「大菩薩峠」の全巻読破がある。 なかなか壮大な目標ではありますなあ。 そしてまずは手始めにと手に取ったのが同著である。 笑ってはいけないよ、あなた! 仏でも同書の評価をめぐって論争になったらしいが、むむぅーうっ、なぜか私にはとっても合ってるかも。 あの有名なマドレーヌのシーンも完璧に再現。 コミック版とはいえ体裁も素晴らしく、「活字部分や解説」が非常に多いので漫画とはいえどもやっぱり難解で侮れないのである。 絵は当時の貴族の暮らしがカラーで美しく描かれ雰囲気を醸し出している。 じつによくできた本である。 私と同じようなことを考えているあーたにも入門編としてオススメである。 どうせ全巻読破できないのなら2800円は安いと断言できる! 私の目標もひょっとしたらこの入門編だけで人生終わってしまうのかも? 続編が楽しみである。
「極端な未来」☆☆☆☆ ジェームズ・キャントンPh.D 椿正晴訳 主婦の友社1900円+税
「不安な経済/漂流する個人」 ☆ リチャードセネット 森田典正訳 大月書店2300円+税
前者は経済・産業・科学の近未来についての予測を行っているものである。 将来について的確な予想ができれば、事業家としても大きな成功を収めることができるし、株式投資などでも大きな果実を得ることができるだろう。 私が多くの本を読むのもそのためでもある。 (ただし読書量が足りないのか、読む本のピントがずれているのか判らないが、私の未来予側が当たったためしがないのが残念ではある) しかも一般的には、これら予測本では具体性に欠ける記述が多いのが難点なのが普通である。 (たとえば、地球温暖化を予測しても、どの会社の株が上がるかは書いていない等々 同書にもさすがそこまでは書いていないが、相当具体的にエネルギー、温暖化、長寿化について述べている。 洞察力のある貴兄らであれば、米国中心の記述ではあるが大きなヒントを得ることも十分に可能だろう。 (私には説明するまでもなく不十分だったが、読み物としても非常に面白かった) 後者は、書名から判断して購入した。 実に購買意欲をそそる題名でしょうが! しかしいけませんでした。 翻訳があまりにひどいのである。 かつての私の高校時代の英文和訳の解答そのものなのである。(これだけでその意味が分かる人は偉い) そのために、読み進めないこと夥し、ついに途中で放棄してしまったのである。 原著者はこのことを知るはずもないのだろうが残念である。 (ひょっとしたら読みづらい理由が、翻訳ではなく私の読解力の不足なのかもしれないが、断定できないのが惜しいところである。)
「ヘミングウエイの酒」☆☆☆ オキ・シロー 河出書房新社 1600円+税
「コーヒーに取りつかれた男たち」 ☆☆☆ 嶋中労 中公文庫743円+税
今回は飲み物についてである。 前者は文豪の小説等の中から酒に関するところのみを取り出したものである。 私なぞ下戸のくせに開高健が「ドライ マティーニ」こそが酒と崇めるのに感化され、わずか1杯も飲めずに撃沈したことがあるが、この著者は酒だけでなくヘミングウエイのすべてに酔いしれた男である。 ハバナのフロリディータ(フローズンダイキリ)、ベニスのハリーズバー等々、と有名な店と酒が続々登場(ヘミングウエイが通ったからこそ有名になったのもあるが)、下戸でもたっぷり味わえて飽きない、酒のうまさと絵になる場面(ざっと30種類以上!)が伝わってくるのである。 私のような下戸のナイトキャップには最高の本である。 「金のある時はまずシャンパンに金を使う。それが金の一番正しい使い方だ。」文豪はこうもおっしゃるのである。
後者はコーヒーの自家焙煎にそれこそ命をかけた男たちの話である。 私のように、砂糖にミルクじゃぶじゃぶなどという邪道では睨まれること請け合い。 食べものの世界はさすがに奥が深いと恐ろしくなるほどである。 チャンスがあればぜひ一度は冥土の土産に飲んでみたいと思う深遠さである。 そんな「口の中をを通るつかの間」に命と情熱をかけている御三家をあなたにもそっとご紹介しよう。 銀座「カフェドランブル」、南千住「カフェバッハ」、吉祥寺「もか」である。 日本中のコーヒー店主がその味を求め通い詰めるというからやはり半端ではない。しかし、この店でコーヒーをいただくには覚悟が要りますなあ!!うぅむぅ〜 人生を捧げるものは薪割り以外にもいくらでもあるのであった。
「日本のお金持研究」 ☆☆ 橘木俊詔/森剛志 日経ビジネス文庫695円+税
橘木氏は経済学者の重鎮であるが、こんな本も書くのだといったところか。まず、お金持の定義だが、年収1億円以上をコンスタントに稼ぐ人であり、わが国にはざっと6千人がいるとのこと。代表的なケースは二つあり、中小企業の創業者と開業医(眼科、美容外科、糖尿病関係など)が現代のお金持であり、かつての長者のイメージとはかなり異なってきている。彼ら経済的な成功者の成功の秘訣については「1位、肉体的・精神的に健康である。2位、自分の職業を愛している。 3位、正直な人柄」とのこと。 うぅーむぅ、微妙な点はあるかもしれないが、私にとっても大したハードルではないなあ。 年齢的にはちょっと遅いかもしれないが、私にもその可能性が十分にあるということだ。 悪い気はしないのだ。 でもちょっと待てよ、弁護士については、1章を割いて論じているにもかかわらず、会計士についてはたった1行の記載があるだけだった、いわく「会計士は実は所得が高い人は日本ではほとんどいないのである。」 今頃言われてもなあ!
「公認会計士vs特捜検察」 ☆☆☆☆☆ 細野祐二 日経BP 1800円+税
鈴木ムネオ氏が国策による不法逮捕であったことはすでにここでも述べたことがあるが、今回は相手が同業者、公認会計士である。 シロアリ等駆除業の会社役員による特別背任を立件しようとした検察は、これが困難であると知ると粉飾に加担したとして会社関係者とともに公認会計士を逮捕した。 会社関係者は執拗な検察の拷問のような脅しによってウソの自白証書にサイン、すべてを否認した会計士は起訴された。 会計のことを少しでも知る人間なら検察の容疑はまったくのデッチ上げ、共謀を行ったという日に彼は海外にいたというアリバイまでを無視し、被告に有利な証拠の採用はしない裁判官。 検察に起訴されると99.9%有罪ということは、本書のようにその罠に嵌められることも一般人にも十分あるということだろう。 これから裁判員制度が始まるが、大きな問題を本書は提示している。 個人的には非常にショッキングな内容である。 ぜひお読みいただきたい。
「ビタミンCがガン細胞を殺す」☆☆☆? 柳沢厚生 角川ssc 720円+税
敬愛するポーリング博士(ノーベル賞2つ受賞、3つ目はちょっとしたいざこざであのワトソン、クリックに取られたとも言われる)の提唱したビタミンC大量服用による風邪対策を私はこの十数年来行ってきた。 風邪気味のいやな感じがすると私は直ちにVCを数グラムを飲用する。 このためか、いわゆる風邪に罹ることが家族ともども著しく減少。 プラセボかもしれないが我が家では確実に効果があったのである。 ところが驚くことに、今度はガンに効くというのである。 しかもなんと一度に数十グラムを静注するという高濃度点滴である。 副作用はなし。 強力な免疫力?でがん細胞だけを攻撃するという。 ちょっと信じられない分量投与とその効果である。 米国では代替医療としてすでに一万人に投与されて効果があるらしい。 今後の情報に注目したいので忘れぬよう?をつけてみた。
「至福のすし」☆☆☆ 「すきやばし次郎」の職人芸術 山本益博 新潮新書680円+税
実はこの本は新着ではない。 2003年に購ったものである。 そのときは、初めて知る「次郎」の名前であった。 グルメ評論家で知られる著者が初めてこの店を訪ねてから20年、「小野二郎」の握るすしのとりこになって通い詰めたのである。 本書の内容の多くを二郎へ聞くとして、すしの真髄について話を聞いているが、あのロビュション氏が仏から飛行機に乗っても食べに来たい店と言い、このカウンターを「天国に一番近い場所」と脱帽したのだから、私がどうこう言う必要はあるまい。 ミシュランガイド東京ではどこが選ばれるのかねえと女房と「まさか寿司のQBEAじゃないよな」、「次郎」なんてあるのかなあ、と話をしていたのでびっくり。 確か二郎さんは相当ご高齢だったはずと気がつき、TVに移った元気なお姿を見て安堵した。(現在83才か) 初読の時に何かの折に銀座に行くことがあったらぜひ食べてみたいと女房と話していたが、ご予算25千円とあったので、かなわず誌上グルメとなっていたが、今回の三つ星受賞で吹っ切れた。 なにしろ、つけ台はわずか10席、当分予約は取れそうもないからである。 しごく残念!! 久しぶりにおフトンの中で至福のすしを食したのであった。 ちなみに、店名が「次郎」なのはすし屋で「二郎」はなんか間が抜けているからだそうである。
「ゲッチョ先生の卵探検記」☆☆☆☆ 盛口満 山と渓谷社 1600円+税
「ゲッチョ先生」こと溝口満先生の最新刊である。 ゲッチョ先生は私の知る限り、たとえ枠からはみ出た生徒であっても、身近な生物に関心を持たせることのできる数少ない一人であろう。 自由の森学園の教師から、沖縄へと移り住み、現在は那覇市のNPO法人珊瑚舎スコーレという、ごくごく小規模な非常にユニークな教育を行っている学校へと移った。 つねに身近な観点から生物を捉え、(虫だったり、ドングリだったり、ゴキブリだったり)「知識の押付けではなく、生徒の興味や関心を引き出して、自ら新しい視点に気づくという生徒にとって理想のタイプの先生と思えるのである。 先生の著作はみな、わたしの就寝前のひと時、かつて科学少年だったころの感覚を呼び起こして幸せにしてくれるのである。 「ぼくらの昆虫記(講談社新書)」もオススメである。 ぜひご一読を。
「イヌからネコから伝染るんです。」☆☆☆藤田紘一郎 講談社文庫 533円+税
ご存じカイチュウ博士こと藤田先生がペットからの「人畜共通感染症」についてわかりやすく述べているものである。 先生は今の日本人はあまりにも、潔癖/清潔主義であるとし、そのためにアトピーなども多いとし、警鐘を鳴らしておられる方だが、同書によると一方で、口移しで餌を食べさせたり、ベッドに一緒に入るなど、ペットに対する無条件な愛情表現は逆に危険であると強く警告する。 ちなみに、若い医師3名に白癬に感染したネズミをたっぷり触らせ、24時間手を洗わぬように厳命し、結果を観察したところ、教授に背いて2名は手を洗い、しかもうちの一人はたわしでごしごし洗ったのであった。(言いつけを守ったのは中国から来た医師のみ) 結果はどうであったか? なんと、ごしごし洗った医師は白癬に感染したのであった。 たわしで、皮膚が傷つき、常在菌が死滅したためという。 もちろん約束を守った医師は無事であったのである。 私事だが、最近愛犬アビーが白癬にかかってしまった。 女房いわく「あなたのキタナイ菌がアビーに移ってしまった。可哀そうに」と直ちに断言した。 私はいつも外出後等々、手を洗ったことにしているのにホント不思議である。
「ワープする宇宙」 5次元時空の謎を解く リサ.ランドール著 ☆☆ NHK出版協会 2900円+税
相対性/時空/アインシュタインなどの書名を見ると手に取らずにおれない性質なので、理解するのは無理とわかっていても購い、苦闘の末ぐっすり安眠の日々がこれまでも多々あったのだが、いまだに飽きもしない。 TVで彼女の美しい姿を見たときから、これこそ本物の最終理論とばかりに勇んで読み始めた。 たしか、ちょっと前は11次元の超ひも理論にのめりこんでいた私が、今度は5次元の宇宙である。 私も忙しいこってす。 大著のほぼ中ほどまでは、これまでの読書の積み重ねのせいで何とか読み進めることができたが、やっぱりあきまへん。 giveup。 何となくわかった喩えが、2次元に住む住民のところを3次元の球体が通り過ぎると、小さな円が突然現れ、徐々に大きくなりそしてまた小さくなって消えてゆく、ように見えるらしいが、4次元の球体→3次元の場合では、突然小さな球体が現れて、徐々に大きくなり、また小さくなって消えうせる、らしい。 むむぅ〜何てことない、ターミネーターの初登場シーンそのものである。(ホントあほやナ私は!) しかし、欧州で現在開発中の超大型加速器が完成すると彼女の理論が証明できそうということなので、そうなるとちかじかノーベル賞も確定だろう。 唯一残念なのは、同書には彼女が独身かどうかの記述がなかったことである。
「養老院より大学院」 ☆☆☆ 内館牧子 講談社文庫 560円
彼女はあの朝青龍に先日ただひとり引退勧告を行った、横綱審議員だが、「女は土俵に上がれない」ことの意義を極めるために、旧帝大のひとつ東北大学大学院修士課程に入学し、3年かけて卒業するまでの体験談である。 この間彼女は、抱えていた仕事は原則すべて断り、ひたすら研究に打ち込んだのである。 私も、身近に「大学院」があれば、是非とも再度学問に打ち込んでみたいという気持ちがあった。 そのためサイバー大学の資料を見たり(スクーリングが福岡なので断念)、地元の大学院の状況を聞いてみたり(興味ある研究内容がみつからなくて断念)、会計専門職大学院はどうかと考えたり(いくらなんでもプライドが許さなかったので断念)と、相手先のやむない理由で現在にいたっている。 女史の生の研究生活をつづる筆致は生き生きとしており、人生には学ぶべきことがまだまだ山ほどあることもわかるし、社会人であっても大学院生活が青春そのものでとても充実しているかが伝わってくる。 よくある質問で、教授が自分の子供ほどでも平気か? に対しても、彼女は違和感ナシと述べる。(たとえ若くとも、圧倒的な知識、教養、洞察力がそうさせるのだろう) ああ、私なぞ、いまだに必須単位がとれなくて留年するーと、目覚めることがあるし、間違いなく大学院より養老院のクチだろう。
「抗癌剤」 ☆☆☆☆ 平岩正樹 祥伝社 740円+税
わたしなぞ、この言葉を聞くだけでシャンプー時にいつもより髪の毛が抜けるような気がするし、抗癌剤は吐き気や食欲不振の副作用がつらいもと聞く。 結果として、これまで私は抗癌剤はQOLを悪化させ死期を早めるモノと信じて疑がわなかった。 しかし、医療の進歩は速く、「効く抗癌剤とその組み合わせ」もできてきたという。 これら最先端の抗がん剤を使用できる(=知識と技術を持った)医者によって完治または現状維持が可能となるらしい。 詳細は同書をお読みいただきたいが、あなた又はあなたの知り合いが癌にかかった時には、必ず本書の該当個所を精読の上、ぜひ参考にしていただきたい。 これまで、自分ががんになった時には、抗癌剤の使用は絶対断ると決めていたのだが、同書によって私の考えが変わったのである。 ちなみに肺がんでもはや手術不可能、事実上の○○宣告を受けていたと思われる知り合いの方が、1クール半ほどの「抗がん剤治療によって」癌がほぼ消失したと、つい先日私のもとにあいさつに来られた。 素晴らしい! ご高齢のため、 詳しい薬の名前もよく覚えていらっしゃらなかったが、血色のよい顔色で現れたのには感動。 今日はこれからゴルフに行きますとのこと。 副題に「知らずに亡くなる年間30万人」とあるが、 「患者よがんと闘うな」の近藤先生のご意見もぜひ聞いてみたいと思うのである。
「隕石コレクター」☆☆☆リチャードノートン/著 江口あとか/訳 築地書館3500円+税
地球外物質を入手できる(しかもタダで)というロマンティックな話が現実味を帯びてくるといったら著者に失礼か? なんと隕石はコレクターが急増し価格も急騰、オークションにもしばしば登場するという。 そのためプロの隕石ハンターは、莫大な収入があるそうな。 一般的に我々が見つけることができるのは大部分が鉄隕石であるので、常に磁石を持ち歩くことがハンターとしての第一歩。 あとは、身近な所に砂漠があれば発見の可能性十分。 まれには月由来の隕石も発見されるとのこと。 もしこれを見つけたらNASAが莫大な資金と労力をかけたアポロ計画と同じ成果を貴方も上げることができるのである。
また、隕石(の写真)が宝石のように美しいのにも感動! ちなみに、日本の探検隊が初めて見つけた南極の特定地域が諸条件から最も隕石採集に適し、しかも大量に発見されているのだが、アマチュアには採集を開放していないそうである。 残念。(このときから隕石に採取地などの名前をつけることがなくなったらしい。あまりに数が多くなったので)
しかし、訳書名は受けを狙いすぎだが、中身は丁寧で十二分に濃くてこの一冊で隕石に関するアマチュアの第一人者になれることは間違いなし。 アメリカではベストセラーになったというのも理解できる。 私は、しばし宇宙のロマンに浸ったのである。
「兵士に告ぐ」 ☆☆☆☆ 杉山隆男 小学館 1600円+税
私が初めて自衛隊ものを読んだのが、同氏の「兵士に聞け(新潮学芸賞)」であり、それからすでに15年が過ぎた。 「━に聞け」では、自衛隊員の垂涎の的、日本のグリンベレーのレンジャー訓練を受ける隊員に焦点を当てていたが、今回は「西部方面普通科連隊」という名称を見る限り何の変哲もない部隊に焦点を当てている。 この部隊は佐世保にあるが、所在地からも何となくお分かりのように、東シナ海に向けてのいわゆる米国の海兵隊のような特殊部隊である。 著者は自衛隊の隊員と密着し(長年の取材経験の上に初めて成り立つ信頼関係があるはずだが、)、通常我々があまり知ることない「ナマ」の自衛隊、いや隊員の姿が浮き上がってくる。 シャバ(一般市民や国民)からは「日蔭者」と揶揄されながらも、その隊員の実像は一般的にはなかなか正直とらえにくいのである。 私は軍隊を単純に認容する立場ではないがミクロの視点からの記述は強くしかも重く訴えるものがある。 現在の「日米の軍事一体化」の大きな流れの中、著者は、ふと「彼らがもっとも平和主義者なのかもしれない」とつぶやくのである。
「ニホンオオカミは生きている」 ☆☆☆☆ 九州祖母山系に狼を追う 西田智 二見書房 1600円+税
またまた狼の本である。 下記の書によると九州でも絶滅したとされるニホンオオカミが生きている可能性のあることを在野の民間研究者が狼らしき写真も添えて報告している。 ニホンオオカミ協会の会長丸山直樹は、まったくこれらの可能性を否定し、国外からの狼の導入に突き進んでいるとする。 やはり、物事はすべて一方的な情報だけではわからないものだ。 私も強く反省! 著者の写した十枚のカラー写真の「狼らしい動物」を丸山は「ジャーマンシェパードかその交雑種ではないか」としているらしいが、私の数十年にわたるシェパ歴から断言できるが丸山のそれは明々白々、誤りである。 私の感じではどう見てもオオカミである。 この写真がシェパードに類するものというのは、シェパ愛好家を愚弄するものであり、丸山が犬種の区別もマトモにできないことを示している。 学者は在野の地道な研究者をたださげすみ無視しようとするが、もっと胸襟を開くべきである。 確かに、この写真の動物は「ニホンオオカミ」とは異なる第三の動物なのかもしれないが、あの今泉吉晴氏も狼の可能性アリとおっしゃっている。 ニホンオオカミ生存の期待を込めてかつまた私の洞察力のなさを恥じて下記の☆5つはここにすべて撤回させていただく。 恐縮至極。 ちなみにK9(米国での警察犬を主人公とした作品」)という映画があったが、傍目には主役が1匹のシェパードに見えたが、実はシーンごとに異なったシェパードであった。 たぶん、一般の人にはまったくわからなかったであろう。
「日本の森にオオカミを放て」☆☆☆☆☆ 吉家世洋 ビイングネットプレス1600円+税
私の住む北海道ではエゾシカ、本州ではカモシカやイノシシによる植生の破壊が進み大きな被害が出ているのはご承知のとおりだが、その根本的な理由が、日本の生態系の頂点にいたオオカミが明治時代に絶滅したからである。 この本は、日本にいたオオカミの近縁である中国よりオオカミを導入し、自然の摂理で生態系の復元を行おうというものである。(このオオカミは体重わずか20kg程度というので、我が愛犬よりもはるかに小さい。) 素人がまず思うのは、人間を襲わないのか?であろう。 しかしこれは杞憂である。 「300万人が咬まれる犬が人類の友なのに、人を襲わないオオカミは敵」という名言があるように、襲われたケースは皆無に近いという。 狂犬病にかかったいわば狂ったオオカミが人間を咬んだのと、キリスト教の影響もあろうから、オオカミは恐ろしいイメージがあるのであろう。 なるほど赤頭巾ちゃんの話は子供にとって怖いですからなあ。 すでにイエローストーン国立公園では、エルクによる生態系の破壊が、カナダから導入されたオオカミによって、その本来の自然の秩序を取り戻し、生態系が回復してきているというのである。 オオカミはパックと呼ばれる5頭前後の集団で暮らし、そのテリトリーは5000ha以上もあり、彼らは自己の個体数もコントロールする!というから、オオカミが大増殖するという心配ないという。 あとは、如何に我々のもつオオカミに対する偏見やイメージを払拭してゆくかが残された問題であるという。 日本の生態系回復への期待を込めて☆五つを差し上げた。 類書に「オオカミを放つ」があり、こちらはより、専門的な見地からの解説になっている。 ぜひ日本オオカミ協会のHPにアクセスを。
「核爆発災害」 ☆☆☆ そのとき何が起こるのか 高田純 中公新書 860円+税
引き続いて、今回もカタストロフィものである。 最終章にはごくわずかだが核爆発でも生き残るための方策が描かれている。 筆者は広島原爆の爆心地近くでも生き延びた人がいることを知り、その理由を調査研究してこの本をまとめたのである。私が気になった生き残り法は同書では単なる付録部分にしか過ぎないのだが、ご紹介しよう。 核弾頭到着の警報が出たらまずは直ちに地下室へ、核爆発の場合には、超高温での蒸発というか焼死、ついで爆風やガラス破片でのでの破壊、さらに、放射線による体細胞ダメージによる死があるという。 このとき核弾頭が空中爆発(広島の場合)なのか、それとも地表爆発なのかによってその後に生き残るすべは大きく異なるという。 地表爆発の場合には、首都圏の場合、ビル群に囲まれているので、消滅範囲は狭いとも言うが、放射性物質を含んだ地表物が舞い上がり、その後降り注ぐので風下は非常に危険となる。(空中爆発では、これらは成層圏にまで上り、きのこ雲を作る) どちらにしても、地上や高層ビル内では助かりそうもないのは明白。 まずは、直ちに窓のない地下室の隅に伏せて、ドアから離れること(爆風でドアが飛ぶかも知れない)後者の場合には風下では灰が降るし、土壌も大きく汚染されるのでしばらくの間決して外へ出てはいけないが、前者の場合には、急速に放射線は半減するので、頃合いを見て非難しようとかいうのである。 それに、昆布を食べるとある。ご承知のように甲状腺の破壊を避けるためにである。 しかし、警報発令から数分で核弾頭は到着するという、私にはそんな短時間で合理的判断ができっこないのは明白。 せいぜい酢こんぶを持ち歩く程度か?
「高層難民」 ☆☆☆ 渡辺実 新潮社新書 680円+税
私の住むこの帯広にも私が読みたいような本の置いてある本屋ができた。 おかげでこの連休はじめは活字にどっぷり、札幌まで出向かなくともここにアップできる本が入手できそうだ。 さて、大都会で大地震になると、地下鉄に乗っていたらまず生きて帰れないだろう位のことは考えていたが、まず安全だろうと思い込んでいた高層ビルにも「海洋性の大地震」の場合には周期の長いユサユサの揺れにより、大きな問題があることがわかった。 エレベータが中途階で止まっても、助けがくるのは2日後とのこと、つまり結論から言うと、本当の大地震では誰も貴方を助けに来てくれないのである。 大都会では、高層難民のほかに、帰宅難民、避難所難民(避難所はもともと、その地区の住民のための避難所であるため、帰宅難民のためではないのである。) さらに、避難所そのものも相当数破壊されるという。 今後30年内の地震発生確率は、宮城県沖では99%、茨城県沖90%、東海地震87%、首都直下型70%というから、根室沖の30〜40%よりは数段危機が迫っているといえよう。 大都会の高層マンションにお住みの方々、今すぐに水を準備せられよ! 地獄はすぐ目の前ですぞ! 昨年小生は、すべての欲望を封印して大枚をはたき自宅庭に井戸を掘った。 これで、一番貴重な飲料水は万が一のときでもたぶん確保できるはず。 後は自宅の耐震化と家具類の固定、食糧の備蓄である。ふだんあまり私が飲まない海外土産のウイスキーもたっぷり貯蔵してある。 しかし、同書によると震災時にアルコール類はのどが渇くので飲んではいけないそうな。 しかし、私の場合水割りができるのだ。
「日本の選択」 ☆☆☆☆ ビル.エモット ピータータスカ 講談社インターナショナル 1600円+税
今からもう四半世紀も前になる。 サッチャーの来日で、わが国も外国に証券会社の門戸を開放することになり、英国系のクライン.オート.ベンソン証券会社が設立された。 私はその設立にかかわり、あるとき会社で背の高くやせた若い男を紹介された。 その風貌はまるでギリシャ彫刻のようであり、「オックスフォードを出た語学の天才だよ」と秘書に教えられた。 その男がピータータスカであった。 彼はその後独立し、まもなくわが国においてストラテジストとしての名声を確立した。 私もその後まもなく独立したがなぜかいまだに名声を確立していない。 「日本の選択」はどうも正しくなかったようである。 さて本論。 今後の日本人経営者についての失敗を恐れず挑戦するようにとの叱咤激励や、英国人という地政学的視点が異なるということからの指摘は、説得力があることと同義のように感じるほどの小気味よさである。 今の政権ポリシーが国際的に見て支離滅裂でも、近い将来に確実に起こるであろう中国の強大化と破滅(今後10年以内のいずれかの時点と彼は言う)が日本に与える影響の可能性などは背筋が寒くなるほどである。 なるほど、日本しか知らないということは、日本をまったく知らないということである。 戦後米国追従だけで事足りていた時代はもうとっくに過ぎ去った。 我々日本人は安倍の言う「美しい国」を実現させるためにも多くの、しかも困難な選択を求められているのである。 若い人よこの本を読め !
「人口が変える世界」 ☆☆☆ 日本経済新聞社編 1500円+税
著者を見るとお分かりのように、同紙の連載記事をまとめたものであるので、パラグラフが短くて読みやすい。 同書によると人口問題はわが国だけではなく世界中で問題となっていることがわかる。 例えば、ユダヤ人の国イスラエルはイスラム国家の人口急増に危機感を強め人工授精が奨励されている、ご存知中国は違法中絶に、男女比の崩れがいずれは大きな問題になるだろうし2050年には高齢者割合が24%となり、その規模の大きさと社会保障が整っていないことはいうまでもないだろうから、この面からも中国はつぶれてしまうのだろう。 一方この頃にはインドが最盛期となり、アジアでは最も影響力を持つことになるだろう、さらにアフリカ諸国ではHIV感染者が2500万人にのぼり、ジンバブエの平均寿命はなんと現在34歳でしかない。 このように、世界中の国家別の人口構成や人口移動が大きく変化することによって、大きな問題となるであろうことは明らかであろう。 こんな他国の現状を知ると、日本だけが少子高齢化で大騒ぎするほどのこともないのである。 しかしふと気がついたが、小生、日経なら毎日読んでいるはずだが、今回すべて新鮮に読了してしまったのはなぜだろうか? なんてこった。
「仏像のひみつ」 ☆☆☆☆ 山本勉 朝日出版社 1400円+税
はるか昔の京都への修学旅行、以来仏像を拝観したのは唯一あの鑑真大和上像しかない記憶にない小生だから、仏像に関してはまったくの素人。 恥ずかしながら仏様にランクがあるとはしりませんでした。 悟りを開いたのが、如来(例えば釈迦如来、薬師如来)で如来を目指して修行中が菩薩(例えば観音菩薩、日光菩薩) 、ついで明王(不動明王など)さらには天(持国天、毘沙門天)。 如来の歯は40本。 足は偏平足でその裏には模様があるとか。 ご承知のように指には水掻きがついており、千手観音の手の数は42本。 1本の手で25人の話を聞けるので 40x25=1000プラスもとの手が2本で42本、しかもその手にはすべて眼がついているらしい。 日本人は昔からアイデァが秀逸ですなあ。 私など、久々に知識が充満して心豊かになりました。 今度は京都へ行っても恥ずかしくないぞと思いつつも、そのときまで読書記憶があるかどうか不明。 解説も平易だしイラストも好感が持てる。 修学旅行生やフルムーン旅行にも最適、できればポケットサイズがあるならいうことなし。 今度はより詳しい仏像の本を読んでみたくなりました。 2007/2/15
「生きていることを楽しんで」 ☆☆☆ ターシャテューダー メディアファクトリー 1600円+税
ちょっぴり太目のコーギー犬と一緒にまだ元気に裸足でいらっしゃるのだろうか?と思いつつも、小ぶりの本だったので我が家にやってきた。 するとその数日後、TVでなんと91歳の彼女のごく最近の姿が! 足腰は多少衰えたというがまだまだ語り口もしっかりとしているのを見ることができたのである。 そのときは、私の時間もしごくゆったりと、やさしく流れ、ほのかな幸せ感さえ画面から漂ってきた時間であった。 ご承知のように彼女は米国を代表する絵本作家であり、D.ソローの女性版ともいえる方でもある。 バーモント州の広大な草原(原野)に住み、花や果樹を育て生活のほとんどを自給自足で賄う。 りんごを絞ってアップルタイザーを作り、蜜蝋のろうそくは年間千本も作る(すべて自家用というのもすごい。)のである。 長い年月によって彼女の顔に刻み込まれた深い皺は一方で強い意志を感じさせるとともに、人と自然の関係を再確認させてくれる貴重な生き証人である。 彼女の日常生活は住まいを始めほとんどが手作りで、什器などは長年にわたり使い込まれたものばかりに囲まれている。(間違ってもTVや電子レンジなどはない!) ページをめくると、多くの写真や自筆のイラストの中に彼女の言葉が淡々とつづられている。 その言葉の響きは、中野孝次のガン日記にあった哲人セネカの言葉に合い通じるものが多いのに驚かされた。 彼女の長い人生の経験が時代を超えて同じ言葉をつぶやかせているのだろう。 ちなみに、彼女は私の知る限り世界でもっとも高齢で最も意志の強いチャーミングなおばあちゃまである。 (一方、男性で世界一チャーミングなおじいさまはD.ブルーナさんであることに異論はないだろう。 これぞ、私の老後の理想の姿である) 2007/1/10
「宝石の裏側」 ☆☆☆☆☆ 内藤幹弘 新潮新書 680円+税
クリスマスにふさわしい恐るべき本である。 つねづね私は、妻に対して、「ダイヤモンドだけは決して買わない、なぜなら闇のシンジケートが相場を操縦して下落を避けているからだ。 通常なら、市場はダイヤであふれかえってているはずなのだから」と宣言し、その約束を30年間厳しく守ってきた。 しかし、この本に書かれていることは、それどころではすまなかった。 女性に人気のティファニーのオープンハート(2万円ほどするそうな)が製造原価せいぜい300円。 キズのついたダイヤはレーザーで色やキズ処理、真珠はアルコール類で染色、サファイアは加熱処理、エメラルドに至ってはサラダ油につけて色を良くして価格を吊り上げる、等々。 百年の恋も一瞬で冷めてしまう詐欺的な加工が行われているという。 奥さんにたまにはスィートテンダイヤモンドをとねだられているアータ、今すぐ書店に駆け込み、この本を愛妻に読ますべきである。 なにしろ大枚ウン十万円が714円ですむことになるのですぞい。 他にも、もう誰もが金輪際宝石類を買う気が失せてしまうほどのショッキングな内容と購入上の留意点が綴られている。 しかし、救いはあった。 著者の経営する宝飾工房「弥馬屋」で買うか、Y氏の店とだけ紹介されているジュエリー工房を探し出すことである。 ちなみに私は妻に、Y氏の店でならいくらでも宝石を貴殿に買い与えようと太っ腹にも約束したのである。 もちろん☆は5個に決まっている。 2006/12/26
「クマムシ?!」 小さな怪物 ☆☆☆☆ 鈴木忠 岩波書店 1300円+税
しばらく前の休日の朝のこと、散歩がてらに愛犬と近くの公園で一休みをしていたら、品の良い初老の紳士がなにやら不穏な動き。 木の表面を覗き込んだり何かを採集しているらしい振る舞いなのである。
小生、思い切って何をなさってらっしゃるのですか?と問うと。 「クマムシを採集しています」、私は思わず「ぎょえーっ、クマムシはこんな所にいるんですか?」と口にすると、「クマムシをご存知だとは光栄です」との丁重なご返事に、またまたひっくり返った。 何でもクマムシに関係する学会(蘚苔学会)が近くのホテルで行われていたとのことで、なんとクマムシ研究者の方であった。(たぶん宇津木先生) ご承知のかたも多いだろうが、クマムシは、沸騰したお湯に入れても、レンジでチンしたり、放射線を浴びせかけても、真空中や極低温でも死なず、百年も乾燥していても水を与えると生返る(*)とかのイメージが先行しているのだが、この本はその生態を書き上げたわが国で初めて!の書物である。 内容もクマムシの見つけ方から飼い方まであり非常に楽しい。 実際のクマムシはわずか0.1ミリほどの大きさだが、その形状は熊のぬいぐるみのようで非常に愛らしく、人気沸騰というのも頷ける。 ちなみに、カラーのイラストや写真も掲載されているが、本当にかわいらしいのである。 もし数cmほどの大きさだったら、昆虫(本当は昆虫類ではないが)のなかでは一番人気となったであろう。
(*)実際は百年間生きていたというのはじつは根拠がない。 それでも、クマムシは「樽」と呼ばれる姿になると、環境変化に強く史上最強といわれるのである。
「失踪日記」 ☆☆☆☆☆ 吾妻ひでお イーストプレス社 1140円+税
私は漫画はほとんど読まないのだが(例外 いしいひさいち)書店で平積みされていたので、ふとページをめくったら止まらなくなってしまった。 まずは、全部実話ですとの断り書きがある。 著者はわりと知られている漫画家らしいが、あるときふと職場放棄をしてその日から一文無しの「浮浪者」になってしまう。 拾ったビニールシート(しかも濡れた)に包まって山中で眠り、街に出てシケモクを拾い、ゴミ箱やゴミ袋を漁り、腐りかけたものも平気で食べ、廃油として捨てられていた食用油をデザートとして「飲み!」これはウマイとすぐに感じるようになるのである。 ホームレスの生活を描いた本はいくつか読んだが、漫画の威力は文章よりはるかに生々しく雄弁である。 人間たった一日でいとも簡単に野犬と同じ生活ができることに驚いてしまうのである。 その後一度は自宅に戻ったが(なんと家族がいる!)、今度は一日中酒びたりでアル中になり幻覚をみて強制入院させられる。 はてまた、その入院生活者の日常はすさまじく、まるで異次元の世界である。 なんというか世の中はいたるところヘンナ人だらけなのである。 唯一の救いは、心が病むと肉体労働が、肉体労働に疲れると精神活動(彼の場合は漫画の制作)がしたくなると述懐される人間の本能的なバランス感覚である。 (同書は各種漫画関係の著名な賞3冠受賞とのこと、納得のいく受賞である。) うぅーむぅ、なるほど、私が薪割りやアウトドアに惹かれるのも日常的にあまりにも高度な知的作業に疲れているからなのだろう。 きっとそうに違いない。 どうりでいつも仕事に力が入らないわけだ。
「ロビンソンクルーソーを探して」 ☆☆☆ 高橋大輔 新潮文庫 514円+税
何を隠そうこの私もご幼少のみぎりには、最も尊敬する人物は彼であった。 そのため、やまぶどうがあれば木の幹にかけておき、乾しブドウを作るとか、小麦の種があっても一度に全部は蒔かないようにするとか、体の具合が悪いときにはタバコの葉とラム酒で癒すとか、無人島では金貨など役にまったく立たないが、(なぜか思い直して)捨てないで取っておく等々、いつでも無人島での生活に対応できるようにあらゆる準備を怠らなかったのであった。 そんな私であるからして、太平洋上にロビンソンクルーソー島というのがあるとか、モデルとなった実在の人物が存在したというのは知っていたが、まさか実際にロビンソンクルーソーの住んだ跡地を確かめるべく10年もの年月をかけてついに現地まで赴いてしまったというのが、この著者なのである。 実在人物セルカークに関する古文書を探し、生家のあった港町を訪れ子孫に会い、そして現地にまで渡るのであった。 まさに尊敬すべき人なのである。 内容はロビンソンに興味のない人にはまったくツマラン紀行記だろうから内容は省略するが、私にとっては、同窓会のような気さえするのである。 ちなみに、ロビンソンクルーソーは無人島での28年間、一度もウンコをしていない。* 私の読書記憶でも確かにそうだった。きっと強度の便秘だったのだろう。 *ウンコに学べ!(ちくま新書)よりの受け売り
「ガン日記」 2004年2月8日ヨリ 3月18日入院マデ ☆☆☆☆ 中野孝次 文芸春秋 1095円+税
「清貧の思想」や「ハラスのいた日々」で知られた著者が、自ら体の不調を知った日から入院するまでのわずか40日あまりの期間の日記である。 たとえ偉大な文学者でもやはりガンには勝てぬのだなあと変に納得。 しかし、体調の異変が日記につづられる筆致にはやはり多少の心の乱れが認められるのである。 他人に見られることを前提にしない日記だから(出版社が遺族を説得して出版にこぎつけたという)、こうも安心するのか、とても正直である。 しかも診察を受けてからがん細胞が見つかったとの診断までの数日はやはりとても長いと述懐しているが、ガンであることがはっきりした以降の日々の感情の起伏は私が想像していたほどでもないのである。 これならばたとえ余命宣告されても、その後もある程度平常心で残された日々を充実してすごすことができるのだから、さすが大文学者だなあ!とついつい感心してしまうのである。
同書より引用しよう。 古代ローマの哲人セネカの死に対処する言葉である。 運命は誰かに起こることは汝にも起こるものと覚悟しおくべし、自分の自由にならぬもの(肉体もしかり)ついては、運命がもたらしたものを平然と受けよ、できるならば自らの意思で望むものの如く、進んで受けよ。 私にとってこの言葉を知るだけでも読む価値があったと言えよう。 ちなみに、かつて私がまだ著者が独文学者であったことを知らなかったときに、「ハラス」とは犬の名前にしては変っているなあ秋シャケじゃあるまいし!と思った記憶がある。 (ここに書くほどのことか?) なるほど、愛犬の名前のつけ方にも飼主のバックグラウンドが見え隠れするのである。 さらに同書とは関係ないが、骨にできるガンは「癌」ではなくて「肉腫」で、「癌」と書くと上皮にできるいわゆる「ガン」。そして「がん」と書くとその両方を含むのだそうな。 いやはや日本語はムツカシイ。
「ミッションスクール」 あこがれの園 ☆☆ 佐藤八寿子 中公新書 760円+税
書名を見たとたんにわれを忘れて手が伸びてしまい気がついたら購ってしまった。 貴方だってきっとそうですよ、オジサンはまことに情けないもんです。 しかし、好奇心と憧れのみで読み進めたが、中身が予想に反してというか何と言うかロマンチックじゃない方に濃いのである。 残念ながら? そう、この書物はMSの「イメージ」をめぐる研究論文だったのである。 維新後はしばらく排斥されていたが、近代化を急ぐ日本にとって、欧化とキリスト教は切り離すことができず、MSは文学などにも多く取り上げられ「ハイカラな」流行の発信地でもあったのである。 なるほど、現在でもMSの中には中学で料理裁縫ではなく、仏語を学ぶこともあるというリベラルな教養教育であり、役に立たないからこそ「ぜいたくでありステキ」なのである。 男子がMSに憧れるのも当然か。 日本史上、最もインパクトを与えたMSガールはもちろん誰もが納得の「正田美智子」さんで、雅子さんの方はレベル度が高すぎて、そこまでブームにならなかったらしい。 ちなみに、本願寺ミッションスクールというのが実在するという。 なにもキリスト教だけのミッション(使命)ではないのである。 私なぞここで一気に読書のテンションが下がってしまいました。
「格差社会」 何が問題なのか ☆☆☆☆☆ 橘木俊詔 岩波新書 700円+税
先に取り上げた大竹文雄氏の最大のライバル(大先輩)の重鎮の最新著作である。 かつて小泉内閣が大竹氏の理論を援用し、格差はおもに高齢化や核家族化によるもので、規制緩和のためではないとしたのに対し、明らかにアメリカ並みの格差が生じてきているとする。 確かにジニ係数も大きくなってきているのである。 先にNHKの放送で全国に衝撃を与えたわが国におけるワーキングプアなどの実態からも、格差が生じてきているのはどうあがいても明白と言えよう。 また格差は単に個人間だけでなく地域格差も大きくなっている。 東京都の平均所得は北海道の1.6倍、沖縄県では2倍にもなり、同じ国とは思えないほどの格差なのである。 200ページほどの新書だが、その内容は平易だが深く、いちいち納得するし非常に読み応えがある。 さすが岩波である。 そしてこのままでは日本の社会はマズイ。 新しい人よ目覚めよ! と思わず叫びたくなるのである。 この問題はアベ総理には決して解決できないし、その意思もないだろう、ひょっとしたら問題の所在すら理解できていないかもしれない。 ぜひ貴方も読まれることをオススメする。 久々の☆5個を差し上げた。
「株式会社に社会的責任はあるのか」 ☆☆☆☆ 岩波書店 奥村宏 2100円+税
この書名に私は多少動揺したのである。 つまり題名から察するに、現在の会社には「社会的責任は認められない」あるいは「責任はあっても果たしていないのか?」とほのめかしているからである。 かつて私が会計士を目指すために経営学の勉強を始めた昭和50年代中ほどは、企業には社会的責任があるという学説が一世風靡しており、底の浅い小生もいたく感動した覚えがあるから、その経験を否定された気がしたのである。 しかし、この書物を読むと話はそう簡単ではないことに気づく。 具体的に企業が責任を負うとはどのようなことなのか? 企業の社会貢献で目にする文化講演活動、例えば三菱財団、トヨタ財団などは企業の博愛心のイメージアップを通じての利益追求の道具に他ならないという。 つまり企業のメセナ活動などが、年度利益の過多によって資金提供が増減することがあることからもその本質は営利目的の所業であるとする。 そして結論として会社の責任は代表者である経営者が負うべきであり、そのためには現在の企業のあり方から変えていかねばばならないというのである。 なるほど、企業メセナを前面に押し出して一見社会貢献しているように見える企業がじつはその本質がかえって営利追求を消費者からカモフラージュしている可能性が高いというのは正論であろう。 イメージ広告の上手な会社には眉につばつけて考えよということだろう。 なるほど物事の本質を知ることは実にムツカシイのである。
「粉飾資本主義」 エンロンとライブドア ☆☆☆ 奥村宏 東洋経済新報社 1600円+税
株式会社一筋に書き続けている奥村宏の最新著である。 彼は会社そのものが資本主義の根幹を成すという「法人資本主義」を提唱しているのだが、エンロンの粉飾による倒産で監査を行っていたアーサーアンダーセン(米国の巨大監査法人)も倒産、カネボウの粉飾による中央青山の分裂とよく似た状況にあるのだが、ライブドアのように、経営者が会社と株主を食い物にする時代になっているという。 彼は両社の粉飾の手口や背景を比較させながらその異同について論証しているのである。 かつて、企業家は事業を起こすために会社を作ったものが、いまは手っ取り早い金儲けのために会社を興すのであり、会社はもはや機関投資家の「おもちゃ」となっており、資本主義は今後どのようになっていくのかその方向性についてはまだ分からない。 と結んでいる。 要するにマネーゲームのために株式公開を行い濡れ手に粟の一儲けということがホリエモンの唯一の目的だったのである。
おかげで会計士への風当たりは強くなるし、研修はたっぷりと受けなきゃならないし、株で損はしなかったけどなぜか腹が立つのである。
「シーボルトの日記」 ☆☆ 再来日時の幕末見聞記 石山禎一、牧幸一訳 八坂書房 4800円+税
北越雪譜という江戸時代の北越地方での語り聞きなどをまとめた本があるが、岩波のワイド版(要するに活字の大きい!本)だったので読んでみたところ、非常に面白かったので、江戸時代に書かれた日記ならより面白いだろうと勝手に想像し、しかも書き手はなんてったってあのシーボルト、私が読むには何の不足もないので大著にもかかわらず購った。 しかし残念、中身はほとんどシーボルトの研究者向けか植物学研究者向けといった内容であった。 正直、フトンの中で読むには相当つらいほどの重量がある。 が、日記やメモに書かれた内容からすると、彼は医師だけでなく、現在の動植物ハンターでもあったことを知ったのである。 彼はありとあらゆる動植物の標本を収集し本国に送っているのであった。 ただし、私の眠気をさました箇所もいくつかあった。 1861年1月4日、日本人の白内障の手術をしたとか、江戸の通りには無人販売の店があるとか、江戸の大地震の直前に見世物用の天然磁石がまったく磁力を失い、その後大地震が起きた、とか 横浜の市場ではシカ、イノシシ、クマ、サル、キジ、ツル、テンジクネズミがたくさん購入できるとか、平日は毎日犯罪者の処刑が行われ多い日は30人にもなるとか、宿場町では、使い古したわらぞうりを大量に積み上げて堆肥にしているとか、 ( そういえば江戸時代のリサイクル事情という本の中で、「高貴な方のしもごえ」は値段が高いとあった、食べ物が良いので肥料としての成分も多いというのがその理由であった。) 等々当時の日本の事情が良く分かるのである。 このような本を買う人はかなり少ないと予想はできるが、もう少し安くてもいいのでは?
「人口減少時代の資産形成」 ☆ 西澤隆 編著 東洋経済新報社2000円+税
なんと私の心を揺さぶる書名であろうか! これこそ私の求めていたものだとばかりに取り組んだ。 しかし、ムツカシそうなグラフや政府の答弁のような論調が長々と続く、経済学の論文を読んでいるようである。 しかも、どこまでページをめくっても私の求めている、「今、何に投資すればよいのか、どうすれば額に汗せずに楽に儲かるのか?」についてのご託宣が出てこないのである。 あげくのはてに最終ページに、「今後の資産形成 おわりにかえて」、にこうあった。 その一つの結論が、「人口構成の変化が個人金融資産に占めるリスク資産を増加させる」という一文に集約されてるのではないだろうか。 オイオイ、こんなことは理詰めで来なくとも誰もが感覚として理解していることだろうが! 私が知りたいのは、日本がパンクするのかしないのか? ドル預金をすべきなのかしないべきなのか? どんな株式が値上がりするのか? 為替レートはどうなるのか? である。 読み疲れはてて、私は、少しムッとしたのである。 しかし、冷静になってみると同社の書籍に個人的な金儲けについてのハウツーなど書かれているはずもなかったのである。 題名に引かれて大枚をはたいた私の性根こそ、人口減少時代でなくとも、資産形成にはふさわしくないことがよく分かったのである。
「犬と話をつけるには」 ☆☆☆ 多和田 悟 文春新書 680円+税
人間と犬の付き合い方に関する本はそれこそゴマンとあるが、書名にあるように「話をする」ではなくて「話をつける」である。 いったいどういうことか非常に気になるのである。 著者はあの盲導犬クイールの訓練士として高名な方であるので、犬の飼い方や訓練の仕方などをエピソードを織り込みながらの当たり障りのない軽い読み物あたりだろうと考えていた。 ところが、最初の1行目から驚いた。「犬は明日のことを考えない」、続いて「犬は後悔しない」とある。 こんなことが書いてあった愛犬モノは初めてである。 一瞬小生、自分のことを書かれているのだろうかと、心乱れ、あせったほどである。(ホンの、冗談ですぞ!! 念のため) 表題の犬と「話をつける」のパラグラフから引用しよう。 盲導犬候補の犬を十頭集めて、「この中で盲導犬をやる子?」と聞いてみると、(中略) 「人間と一緒に暮らすの平気だよ」と答えるのもいます。そういう犬に、「じゃあ、お前、盲導犬やる?」と聞くと 「うん、やってみる」と、ちゃんと答えます。 と書かれている。 絶句である。 また著者は知る限りにおいて、盲導犬の寿命が短いというのは誤解であるという。 盲導犬は厳しいしつけと環境の中でストレスにさらされて可哀相にと推察していたこともどうも間違っていたようだ。 スナップ写真も多く、思わず微笑んでしまうのである。
「ヤバい経済学」 ☆☆☆☆ スティーブンDレヴィット他 望月衛 訳 東洋経済新報社 1800円+税
原題がFreakonomicsとあるので、オタク経済学というほうが正しいかも、ふつうならこの私が手に取るような題名ではないのだが、東洋経済新報社である。 読まずにおれるかと言った感じである。 内容は世の中の裏側を計量経済学?で見るとこのような事実になるという、刺激的な内容である。 賛否両論を巻き起こしたというのも理解できる。 たとえば、NY市長だったジュリアーノの「割れ窓理論」というのを覚えていらっしゃるだろうか? 学校の窓ガラスが割れたらすぐに対応するなど、ごく小さな犯罪を見逃さないで、つぎの大きな犯罪への抑止力とさせるといったものである。 実際に彼の代にはNY市の犯罪は大幅に減少したのである、 だが、経済学的な真実は異なっていた。 米国では1973年1月、中絶が合法的になったのである。 その結果、育児などする可能性が微塵もないような貧しい未婚の未成人が安いお金で合法的に中絶をしたのであった。 それまでなら、こういった環境に生まれた子供は通常犯罪を犯す率が極めて高いのであるが、彼らは生まれずに済んだので犯罪に手を染めることもなかったのである。 こういった、考えもつかないような事象が経済学で明らかになってきたのである。 他にも、日本の大相撲の八百長は100%行われているとされるし、家庭でよい成績の子供が育つ条件はなんだろうか?とか、 生まれた子供につける名前でオサトや所得水準などもがわかるとか、物事の隠された裏側を経済学的に検討しているのである。 じつにオモシロイ。 すでにこのコラムで紹介した大竹文雄教授の「経済学的思考のセンス」も同書と同じトコロをついていたのだ。
「古今和歌集」 全訳注 ☆ 講談社学術文庫 久會神昇 全4巻 1050円+税 他
自分でも、このような古典を手にするとは今もって信じられない驚異なのである。 古文が嫌いで嫌いで仕方がなかった小生が、先に読んだ「俳句を作ろう」で俳句の基本は和歌の本家とりにある云々の一節になるほどそんなものかと感じ、たまたま紀伊国屋でフェアをやっていたので、どうせ熟睡の友くらいにはなるだろうとのいい加減な気持ちで購ったのである。 人間年を取ると変わるものですなあ! ところが、基礎力がまったくないので、恥をしのんで書くのだが(実はこのHP自体が恥なのだが)、初めは歌そのものが読めないのである。 ほとんどがひらがなで書かれているにもかかわらずである。 分かち書きしていないローマ字文書のようであるといったら分かりやすいか? それでもここのところはまってしまいずっと、根性で毎晩、マーカーペン片手に眠りに落ちるまでの間しばし格闘! ようやく分かったことは、感嘆、強調、現在完了をあらはす助詞が多くあり! 「桜の枝」は手折りするものであり(今なら軽犯罪?)、男女関係は華々しく、夜這いすると掛け布団の替わりにお互いの着物を掛けて寝ていたのだ。 こんなんで寒くなかったのかな?としたり顔で女房に言うと、「アータはばかねえ、昔は十二単でしょうが!」?、まっ、まっことか? それゆえ「衣々の別れの朝」となり、人を思えば、わが袖は涙で濡れそぼ、恋ひしいことよ!となるのである。 しかも第三巻など、恋の歌ばかり延々と続くぞのであることよけむ。 私も、だんだんワケが分からなくなってしまひぬるかな。 「もみぢ」は紅葉することで七夕は「秋」のことだったり、出会うのはいつも「逢坂の関」、また「枕詞」が何十種類もあるとは正直知りませんでした。 本日までにほぼ80%超を読破、なんとマーカーも一本使い切ってしまった。 (キャップし忘れみ乾燥しぞも!) 注:みは理由をあらわす接尾語なるらむ。 うわっ、文章が、古文混じりになってきたので、このあたりでぬることにせむ。
「俳句を作ろう」 ☆☆☆☆ 仁平勝 講談社学術新書 680円+税
雨の日の休日のひととき、好き勝手に批評しながらのTV俳句番組も時間つぶしにはけっこう楽しいものがある。 さらに汀子と兜太のバトルがあれば言うことなし。 そこで多少は基礎を学んでみようとこの本を手に取った。 まずは「季語と五七五の定型」が大原則とのお達しから始まる。 フムフム。 ついで簡単な俳句の考え方の説明の後、例示されている句を読む−が、この段階ではまだその句の良さが私にはイマイチ。 ついで懇切丁寧な俳句としての解釈のポイントを読み−なるほどそういうことかと納得。 そこで今一度ページを戻し、再度その句に戻ると、なんと作者の感じた感動や情景がひとりでに浮かび思わず私も心が揺さぶられ、リラックスしたのである。 どちらかといえば、この本はハウツーものよりは癒しの読み物と言う感じである。 おかげで先日の長い列車の中の時間も短く感じるほどだったのである。 ちなみに、巻末近くに兜太が一句取り上げられており、著者は気配りが細やかなのである。 ついでに引用しよう。 よく知られた句である 「暗黒や関東平野に火事ひとつ」 しかし、やっぱ、解説がなきゃこの句の良さは解らないなあ!
「情報と戦争」 ☆☆☆☆ 江畑謙介 NTT出版 2400円+税
云わずと知れた軍事評論家の近年の軍事状況にかかる最近の評論である。 近年兵器のIT化の進展はすさまじく、戦争形態は従来型の戦争とまったく異なってきて新たな軍事パラダイムが築かれているとする。 これを「軍事における革命(RMA)」 Revoluion in Miritary Affiarsと呼ぶのだが、(軍事革命とはまったく意味が異なる)、イラク戦争はこの高度にIT化された軍隊とそうではない軍隊との戦いが見せつけられた史上初の実例であるとのこと、ようするに横綱と赤子(序の口以下)の戦いである。 兵士一人一人がGPS/PC端末と高感度暗視鏡で武装して、闇夜の中、リアルタイムで戦場の様子が分かり、弾頭はピンポイントで目標物を破壊するのである。 この本を読む限り、米国に軍事力で勝つことは100%不可能、こうなるとテロだけが唯一の対抗手段らしい。 金正日も、フセインのあっけない幕切れに、恐怖感におののいたというのである。
氏の文体は、軍事専門用語が多いのは仕方ないが、あくまでも冷静に淡々と記述しかつ論理も厳密であり、いかなる批判的場面をも想定した文章であることをうかがわせる。 彼の著作のほとんどが戦争や兵器について書いているのだが、たんなる「軍事オタク」ではなく、きっとヒューマニストで平和主義者なのだろうなあという感が行間から強くしてくるのである。 これまでに起こった戦争も、すべての当事者が、「自由と祖国を敵から守るためにやむなく始めたと主張している」という彼の視点は考えさせられる。 また軍事関係の書物を読むことが逆に平和についてこれほどまで考えさせられるものだということを私は彼の多くの著作から学んだのである。 彼の著作は戦争オタクだけが読む本ではないのである。
「眼の誕生」 ☆☆☆ アンドリューパーカー 渡辺政隆他訳 草思社 2200円+税
NHK地球大紀行だったか、アロマノカリスという、イセエビの親玉のような奇妙な生物がCGで動き回っていたのをご記憶だろうか? 今は絶滅したこれらの生物が大量にしかも短期間にこの地球上に突然生じたのがカンブリア大爆発と呼ばれる今から4億5千万円ほど前の時代である、あの有名なバージェス頁岩にはまだまだこれらの化石が山ほど埋まっているはずである。 この辺りの話は「ワンダフルライフ SJグールド 」 に詳しい。 ちなみに私は一度でいいから現地で化石の一つでも拾ってみたいと思っていたのだが、どうやら厳重に管理されていて、盗掘など一切できないらしい。(小生、この地で2度ほど化石を求めての旅に出たことがあるが、収穫ゼロ、まるで子供の探検隊のようだ) この時期に4つだった動物門が一気に38門に進化したが、それがなぜなのかはこれまではっきりしていなかったが、結論から言うと、著者は、この時代に初めて生物に視覚が生じたために、体制(体の見えない内部の構造)の進化が一気に進んだのだという。 体色や外観などは変異が比較的起こりやすく、体内的な変異はその性質上困難であるが、光を感じることが進化の刺激になることによって、捕食するため/されないために急速に進化が進んだと言うのである。 この本の全体の8割以上が、この「光スイッチ」理論へ導くための、外堀を埋めていく論証が延々と続くのだが、なるほど説得力がある。
これから5年・「地価は半値になる」 ☆☆? 井上明義他 PHP研究所 1300円+税
4/6の日経新聞朝刊に「JPモルガン信託銀行」が半年間業務停止という、ごく小さな記事が載っていたが、その内容は驚くべきものだった。 すなわち不動産信託の際に本来行うべき土地等の鑑定評価を行わなかったり、水増し評価を行って土地の価格を吊り上げていたとのことである。
この記事をみて、すでに読了していた本書をたった今再読しここに取り上げることにしたのである。
土地の水増し評価は、かつてのバブル時に日本中の銀行が行っていたことと同じである。 同氏による類著「土地の値段はこう決まる」にも数年後に外資系企業による、不動産の不良債権化が表面化してくれば、一段と地価は下がるとあったが、ズバリ的中である。
小職は、出版社がPHP研究所(*)ということからとりあえずは、その内容に多少の信頼性をおき、ついで著者の不動産鑑定に対する真摯な姿勢が行間にあふれていることから、この著者の指摘はおおむね正しいと確信するにいたったのである。
昨今首都圏で地価の上昇が指摘されているが、それはその土地の周辺の環境が変わったために、本質的な地価の上昇ではないとする。なるほど、地下鉄の駅ができるとその周辺の地価が上がるのは当然で、そうでないところは下落することになる。 実に分かりやすい。 少なくとも、この本を読んで新規に不動産取得に触手を伸ばす人は少ないだろう。
私事だが、子供が首都圏の大学に進学した際に某Lマンション業者からワンルームマンションの新築物件を買わないか?との熱心な売込みがあり、高い家賃を払い続けるよりはいっそのこと買ってローンを組んだほうが、ただ、家賃を払い続けるより資産的にも有利ではないかと悩んだことがあった。 ほーら見ろ! 結局、不動産投資して儲かるのは私ではなく、販売業者なのだ! 2010年には、私の出した結論が正しかったことが証明される?かも知れない。 それまで、この本の内容はしっかり覚えておこう。
(*)小生この出版社の本は基本的に好かないのだが、ついつい書名で買ってしまったのである。
「物理学校」 近代史のなかの理学生 ☆☆☆ 馬場錬成 中公新書ラクレ 880円+税
読了後に思えば、この本はいわば東京理科大学125年史そのものである。 しかし一方で、明治の若干20代の若き16人の学徒がその使命感で、わが国初の私立の理工系単科大学を創り上げた熱意と情熱がひしひしと伝わってくる。
その創立は慶応には遅れるものの早稲田より一年早い明治24年なのである。 話には聞いていた、「入るのはやさしいが出るのがムツカシイ」という東京物理学講習所の伝統は、昨今の大学のレベル低下となんと異なることよ。 当時は無事に卒業できるのはごくわずか、入学者の数%しかいなかったというのである。 しかも、授業はすべて夜間、そう、教える方ももちろん昼間の仕事のあとである、あまりの厳しさに、生徒がたった一人になったこともあるという。 昔は、こんなに使命感に燃え、人生をささげた若者がいたという事実は、強く胸を打つ。
ところで、読了してハタ!と思い出したことがある。 小職もかつてまだ若い頃、この田舎町で社会人などの希望者10人ほどを対象に無償で夜間にスペースを借りて日商1級の受験指導をしたことがある。 この地方では日商1級を教えられる指導者がいないと聞いたからである。 しかし私の場合一年ほどで力尽きた。 晩酌のビールの欲望に負けたのである。 当時この本を読んでいればなああ〜と思うと、多少ナサケナイが分相応と思い、納得することにした。 しかし、いわば大学史を読んで目許が濡れた箇所があったのには我ながらオドロイた。 恥ずかしいので引用はしないが、はたして貴方にもあるだろうか?
[本日の水木サン」 ☆☆☆☆ 水木しげる 大泉実成編 草思社1500円+税
帯に、思わず心がゆるむ名言366日(うるう年にも対応!)とあるので、まずはここから軽いジャブである。
氏は言わずもがな、太平洋戦争で隻腕となった妖怪作家で、ご存知あのゲゲゲの鬼太郎の作者である。かつてNHKドラマの「のんのんばあとオレ?」の主人公でもある。 氏の出身地の境港は、町の通りのいたるところに妖怪の像が並び、シャッター通りに華を添えている?のはご存知の方も多いだろう。 氏の南方戦線での極限での体験が、妖怪という媒体を通じて、この珠玉の名言となって帰ってきたのである。 まさにこの拝金主義の日本に柔らかな「ゆるみ」を与えてくれる清涼剤なのかもしれない。 同書より引用しよう。 1/31 屁のような人生 2/9 努力は人を裏切る。 5/15 人間は誰でも仕事をするのはいやなものだ。 6/27 急ぐことは、死につながり、ゆるやかに進むことは生を豊かにする(中略)全くそのとおりだ。 9/13 人間はいろんなものを食べますが、死ねば大地に食べられるわけですよ。 11/6 目に見えない(妖怪の)世界には国境はないです。 12/31 ではまたあの世で。 なんと単純なのに説得力があるのだろう。
我が家の子供たちは、子供の頃に「座敷童子や小人さん」を実際に見た(という)貴重な経験を持っているというのが彼らの自慢の種だが、水木センセイなら、今現在でも、妖怪たちと一緒に暮らしているのかもしれない。 なお、この書はNHKのブックレビューでも紹介されている。
「ハートで感じる英文法」 ☆☆☆☆☆ 大西泰人/ポールマクベイ NHK出版 950円+税
小生、老化防止のために、また子供たちに「お父さんもかつては英語ができたんだ」と言えるようにと、なるべく英語に接するようにしているつもりなのだが、そう思い立つのが、どうも花粉症の季節と一致しているのはなぜだろう? まあっいいか、そんなことは。 ところで、この本はNHKで放送されている型破りな、英文法の番組をまとめたものである。 このような番組や本は、かつてはなかったし、これまでの既成概念を打ち破る英文法学習のあらたなパラダイムとなるであろう本である。 絶賛!!
恥ずかしながら、これまで何度も落ち続けている私の目の「うろこ」が今回もまた落ちてしまった。(何枚あるのだろうか?私の眼のうろこは!) そう言えば、わが子が始めて習った中1英語のテキストになんと「数えられる名詞と数えられない名詞」の説明があり、驚愕したことをいまだに覚えている。(私がこの文法を学んだのはたしか高1のときだったような気がするのだが)
自慢でないが、これらの区別は私はこのトシになって初めてネイティブ感覚で理解できたのである。 ちなみに、言い訳するわけじゃないが、まだ読了したわけではないので読者諸兄に置かれては誤解のない様に願いたい。 皆様方の英語力のアップについては確信をもてないが、(私の)寝つきが良くなることだけは確実である。 むむ〜っ、昨日もよく眠れた。 受験生にも復習用の教材として絶対のオススメである。
[ル・コルビュジェの勇気ある住宅」 ☆☆ 安藤忠雄 新潮社1400円+税
建築にまったく興味のない人も、ル・コルビュジェや安藤忠雄の名前はご存知だろう。 ともに世界と日本を代表する有名な建築家である。 この、建築界に革命を起こしたといわれるルコルビュジェの設計した建物について、これまた異彩を放つボクサー上がりの特異な建築家、安藤忠雄がその魅力をあますことなく語っている......はずなのだが、残念ながら門外漢の小生には、なかなかすんなり納得あるいは理解、同感、感動、その他もろもろ、できないのである。 ようするに、きっと、たぶん、それまでの建築の既成概念を打ち破ったところが、天才なのだろうなあ。
そんな私でさえ知っていた、例のレマン湖のほとりの細長い家、わずか20坪ほどの家の写真をみても、良いのは湖に面した立地条件だけだろう、他にどこがいいんじゃ! 日本なら地震ですぐつぶれてしまうぞ!と突っ込みたくなる感触や、終の棲家となった8畳ほどのまるで「掘立て」小屋じゃ、いくらなんでも狭すぎないか? これじゃ鴨長明もびっくりだなあ。 世界の建築家も晩年はオカネに苦労したのかな?などと、あまたの信奉する建築デザイナーの風上にも置けない?自分の芸術的センスのなさを感じた次第。
そういえば、妻が何かの折にまだ小さかった娘を連れて、向学のためにと、京都で三十三間堂などのあとに金閣寺を廻ったら、娘は「あたちはこんなのが好きだったのよ〜」と大きな声で叫び、ホント情けない思いをしたと妻が言っていたのを思いだしてしまった。
「経済学的思考のセンス」 お金のない人を助けるためには ☆☆☆☆ 大竹文雄 中公新書780円+税
「日本の不平等」の著作のある大竹文雄氏は、小生の知る限り経済学的な業績を今後も相当に上げるような気がする先生なのだが、この本も、初心者向けに分かりやすく本質を捉えた、実に面白く経済学的エピソード満載のためになる本である。
ただ残念なことに書名そのものには「経済学的思考のセンス」がないのは残念、書名が変われば「さお竹屋?」位は売れるのでは?
例えば、高学歴、高収入、高身長と言う「三高」という女性の好みがあるとされるが、現在の賃金を決める上で最も重要なのは16歳のときの身長であるとのこと、わが国では身長1cm伸びると時間賃金が0.8%高くなるし、子供の所得に与えるさまざまな親の属性の中で最も重要なのは父親の身長であり、父親の身長が高いと、子供の16歳児の身長が高いことも予測できるとのこと。
そのほかに、人は節税のために長生きするか? すなわち相続税の減税の税制改革の前後ではその直前に死亡率が低下し、直後に増加していることを実証したと言う米国教授の説や、五輪でのメダル獲得数は一人当たりGDPと人口に依存するとか、賞金総額の大きい大会ほどゴルファーの成績が良いとか、国民年金の未納問題は、既得権益世代に対する若者の逆襲であるとか、興味ある話題は尽きない。
小生、この本は文系版竹内久美子ダナと感じたのだが、これであなたも「経済学中毒」にかかってしまうかもしれない。
「在宅で死ぬと言うこと」 ☆☆☆☆ 聖路加国際病院訪問看護科ナースマネージャー 押川真喜子 文春文庫 476円+税
裏表紙に、涙なくては読めないとのコメントがあったが、どうせたいしたことはないだろうと思って気楽な気持ちで本書を手に取ったのだが、すべて、実話の話であり、それだけ余計に胸にずしんと響いた。 小生、いつものように、ほろ酔い気分の布団の中で眠りにつく前の儀式のようにページに目を落としたが、水上勉じゃないが目もとが濡れて先へとなかなか読み進めないのである。 トシ相応に、だいぶ涙もろくなった私だが、読書中にそうなったのは、若きプロ棋士の生と死を描いた「聖の青春」(大崎善生 著)いらい久々である。
この程度の厚さの文庫本なら、一気に全部読んでしまうのが通例の私だが、一家族の看護の日々の節を読むだけで精一杯、特に若い人の死は、見知らぬ家庭の話であっても、より辛く、悲しく、さみしく、いたましい。 現実のあまりの重さに、睡眠薬がわりどころか、目がさえてしまうのである。 現代社会で、周囲の協力なしに、在宅で死を迎えることの難しさと、看取ったときの遺族の気持ちが、淡々とした筆致で溢れ出てくる。
小生自身もこれまで漠然と、最後は家族に囲まれて自宅で死ぬのが理想かなあと、簡単に考えていたが、わが身に照らしてみたら相当にムツカシイことが分かった。 愛妻には「介護するかどうかはアナタの今後の精進によって判断する」といわれるし、やはり病院でスパゲッテイ状態で逝くのが妥当なところか? 聖路加国際病院は、あのご高齢でなお現役の医師である、日野原理事長のところである。きっと理事長同様素晴らしい病院だろう。 それにしても、どのケースでもそうだが、末期の患者には相当な肉体的苦痛があることが多いのが分かった。
私はどこで死んでもかまわないが、苦痛の中で死んでいくのだけはいやだなあ、とつくづく思う。
「下流社会 」 新たな階層集団の出現 ☆☆ 三浦展 著 光文社新書 780円+税
小生、最近の日本の社会構造の変化に興味があり、こういった題名の書籍に目を通すことが多い。 内容的には、大手広告会社の市場調査のように分かったような分からないような軽い文章でのおおむね大都会周辺での消費面から見た報告になっているが、結局すでに中流社会は崩壊し、上流階級はさらに上流へ、中流階級は下流階級へと、さらに格差が開くと言った論調である。
著者の言う下流社会の人間の特徴は、「人生に対する意欲のない人間」としている。 おカネの問題ばかりではないのである。 単なる読み物としてはオモシロイかもしれないが、ほとんどすでに明らかにされていることが多いと言えよう。 ところで、本書のはじめに、あなたの「下流度」チェックがある。 それによると.、あー 何てことはない、私は確実に「下流的」な人間に分類されてしまった。 エーッそんなはずでは、と思うも、なぜか怒る意欲もないし、怒ることも面倒である。 そう、上記のこの感覚こそが下流社会人に特有の感覚であるという。 残念と言うほどではないが、本書が指摘するように、小生が間違いなく下流社会の人間だというのもどうも間違いなさそうだ。 だからと言うわけじゃあないが、☆はふたつにした。
「物語 大英博物館」 250年の軌跡 ☆☆☆☆ 出口保夫 著 中公新書 780円+税
つい先日、知人から欧州旅行のお土産だと言って、ロゼッタストーン模様のネクタイを頂いた。 着用者のセンスとあいまって、なかなかいい感じである。 そんな経緯があって、ナポレオンがエジプトで戦利品として持ち帰ったロゼッタストーン(シャンポリオンが解読した経緯は「ロゼッタストーン解読」に詳しい)が、ふと思えば、フランスの財産だったはずのものがなぜ大英博物館にあるのか?と疑問がわいた。当然英仏戦争の賠償金とされたのだろうと漠然と考えていたのである。
どうせ、大英博物館の膨大なコレクションほとんどが陽の沈まぬ国、大英帝国の略奪品や戦利品のはず、それならなぜ各国が返還要求をしないのかなあと、素人考えでいたがけっこう、思い込みであった。 そしてこの本を読んで、ハイ、なぞが解けました。 イギリス人の大富豪たちは偉いのだ。
大英博物館はなんとハンススローンという医師の個人コレクションの寄付から始まったと言うのである。 いわゆる戦利品はそれ程でないのである。 そして読むほどに、金持ちの金の使い方には色々あるもんだと痛感させられた。
株式上場で儲けたカネで宇宙旅行に行くのも良いだろう。 しかし大英博物館のコレクションを構成する美術品等を収集するには財力だけでなく、深遠な知識や教養、品格、本物を見つける力−鑑識眼などが必要なはず。ホントおカネの使い方はムツカしい。 しかも、入館料はいまだに無料! まさに英国の底力を見せられたような気がするのである。
「デフレは終わるのか」 ☆☆☆☆ 安達誠司 著 東洋経済新報社 1800円+tax
世にいわゆるトンデモ本というのがある。宇宙人は実在しただの、霊魂だの超常現象だの面白おかしく書いてあるものだが、社会経済の書物の中にも、同じと言えるかどうかは別にして、日本が破産する。スーパーインフレがやってくる。老人税がかかる等々といったトンデモ論調のベストセラーがある。 まさにありそうな話で、これらを読んでみると小生など変に納得して直ちにインフレ対策をしなくてはと思ってしまう。
そんな折、この本が目にとまった。
著者はドイツ証券のシニアエコノミストであるが、デフレが終焉しインフレとなるときのマーケットの動きについてきっちりと書き上げている。
なるほど、デフレから脱却する時には、こんな動きが見られるのか、と言ったことが、いくつかの指標で具体的に示されている。
ここでは引用は避けるので、ぜひ自分の目で確かめていただきたい。
アルコールで脳みそが薄まった私なぞ、一度読んだだけでは、理解が十分ではなかったために、もう一度読み直おさなきゃと思わずにいられない濃さである。
本書によると石橋湛山のデフレに対する考察は鋭く、的確で賞賛に値する首相であったとしている。 それに比較して小泉首相の情けなさよ!
オススメである。 そして他人より一刻も早くインフレの予兆を認識し、生き抜こう。
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