北海道・鹿追町
 デーリィサービスカンパニィ
 (調査日:平成12年1月24〜25日)

 鹿追町は北海道の一大農業地帯十勝平野の北西端に位置し、大雪山国立公園の一部を含む夫婦山のふもとに広がる山麓農村地帯です。
 本町における酪農ヘルパー利用組合の発足推移は、平成2年度、酪農関係機関・団体で検討委員会を設置し、10数回の協議を重ねた結果、酪農家自ら協同して法人化(有限会社)し、「酪農の安定と近代的経営の確立・生活水準向上をはかるため、農休日を制定し・酪農家個々が自ら休日を恒久的に確保するため協同してヘルパー事業を行う」ことを目的に、平成3年3月1日、有限会社「鹿追町デーリィサービスカンパニィ」として発足しました。
 ヘルパー職員の身分は、有限会社組織が保証し、加入者(酪農家全員)が社員として出資・基金(@100 万円)の拠出をしています。
 ヘルパー職員の活動体制は専任ヘルパー12名(男女とも各6名)、臨時ヘルパー4名、事務員1名。通常は2〜3名単位ですが、1名派遣もあり車両7台により稼働しています。
 また、酪農家(社員)が一時的に経営を任せ、安心して休日が取れるよう、新入ヘルパー職員については3ヶ月前後の期間をかけて乳牛の飼育管理、パイプライン、パーラー、機械などの研修・指導を行っているので、現在、酪農家(社員)との信頼関係が健全に保たれており、働く・休むの調和もうまく取れているようです。
 酪農ヘルパー事業の概況は、酪農家戸数 134戸のうち参加戸数は 121戸で、加入率90.3%、飼養頭数は12,036頭でうち搾乳牛は 7,091頭です。
ヘルパー利用状況では、全体の利用日数は1,495 日です。内訳は、定期利用 1,208日(81%)、不定期利用 287日(19%)となっています。ヘルパー1人当たりの就労日数は 271日(平均年間給与額300 万円)。平均年齢は24.9歳、平均金属年数は2〜3年です。
 以上により、参加農家1戸当たり利用日数は全道平均を大きく上回る12.4日となっています。
 利用料金は、ヘルパー2名/夕朝セットで、
30頭搾乳規模の場合 25,000 円
50頭搾乳規模の場合 32,000 円
となっています。
 利用申し込みは、次月分は毎月10日締め切りで、毎月11日より3ヶ月先までの申し込みを開始しています(ヘルパー職員の休み・出役日数に合わせて受け付け)。利用料金の徴収は、作業報告書により利用料金を計算し、10日ごとに締めて徴収しています。
利用組合運営のメリットおよび問題点としては、酪農家(社員)が会社経営に参加して、自分たちでヘルパー職員を雇用しているとの自覚により、利用促進につながっていると思われます。
 酪農ヘルパー事業の遂行に当たっては、作業前に十分な引き継ぎをすることで大きな問題は起きませんが、ヘルパー職員が若いことで結婚や新規就農により早期退職となり、勤務年数が短いことが悩みの種です。
 さて本題の傷病時利用事業の取り組みは、これまで、ケガ、病気などの緊急の場合は臨時ヘルパー要員とヘルパー職員で日程調整し対応しており、長期出役ができず、酪農家は無理をして働いてきた部分があります。しかし、本事業(平成9年)の取り組みを機会に、緊急時ヘルパー要員として専任職員を配置したことにより、安心して治療に専念し完治したうえで仕事に戻ってもらえるようになりました。また、JA鹿追町・酪農振興会の支援を得るとともに、社員外の酪農家を含め 141戸(当時 109%の加入率)の加入により、事業に取り組んでいます。
 互助会の負担金は、1戸当たり年 3,500円、利用料金の負担軽減期間を60日以内、ただし出産については出産日前1週間・出産日後2週間以内、利用料金の負担軽減額を2分の1以内で実施しています。
 本事業の利用状況は、平成9年度が4戸/ 127日、平成10年度が16戸/ 287日、平成11年度(第3四半期)は6戸/ 179.5日の実績となっており、利用度が高いとして注目されています。
 その理由としては、酪農家の規模が大きい(飼養頭数 100頭以上、乳量 610t平均)、専任ヘルパー要員が確保されている、利用組合が頼りにされているなどがあげられます。
(JA北海道農協中央会・小田政男)