酪農ヘルパーの手引き −北海道鹿追町−




(有)鹿追町デーリーサービスカンパニー・業務課長 船尾 豊

 酪農ヘルパーという仕事はサービス業であるということを認識して仕事をしています。当社では、2人ないし3人で1組となって、1件の酪農家の仕事を丸ごと請け負うので、当然農家の人は家にいないことがことが多いのです。そこで作業に入る前日には引き継ぎをしっかりして、誤搾乳などのトラブルのないよう心がけて、家の人に安心して休んでもらえるよう努力しています。
 以下のことは、過去の失敗をもとにして作った、当社でこれからヘルパーとして働く人のための手引きです。
 予期せぬトラブルを、少しは解消できるのではないかと期待しているところです。

引き継ぎ時のポイント

ポイント@:こちらから質問する

 前回の引き継ぎ書を見ながら、こちらから質問する形で内容を聞いた方が、スムーズに進められるようです。
 酪農家の仕事というのは、ほぼ毎日同じパターンなので、毎日やっている農家の人は体で仕事を覚えている人が多く、農家の人主導で説明してもらうと、大切なところが抜けているケースもあります。そこで、細かいところまで質問しながら引き継ぎをするのが良いと思います。慣れてくれば、およそ30分前後で完了します。

ポイントA:前回の問題点をチェック

 前回の作業で至らなかいところがなかったかを、農家の人に聞きます。
 もし何かを指摘されたら、そのことに充分注意し、同じ失敗をくりかえさないようにします。

ポイントB:連絡先を聞く

 緊急時の連絡先を聞いておきます。
 これは、何か突発的なトラブルがあった時の対処方法がわからない時などに、指示を受けるために必要なことです。

搾乳時のポイント

ポイント@:搾乳方法を確認する

 搾乳方法は必ず聞きます。農家によって、前搾りをする、しない。タオルは1頭1枚か、1人1枚か。ディッピングをするか、しないかなど、いろいろなパターンがあり、その農家のやり方で搾乳した方が、少しでも牛のストレスを軽減できるのではないかと思います。

ポイントA:牛体をチェック

 搾乳前に必ず牛をチェックし、3本乳や、抗生物質使用牛がいれば、牛体にスプレーで印を付けます。
 フリーストール牛舎では、印付きの牛がパーラーに入ってきた時に、その牛の番号をチェックし、印が見づらい時は、スプレーで印を付けます。
ポイント:個体の表示をチェック
 おとなしいと思っていても、キックノンや胴じめの表示がある時は、表示に従います。その理由として、もしミルカーを落とされ、牛に踏まれたりすると、破損させてしまうことが考えられます。
 ミルカーの部品は、どんな小さな物でもかなり高価な物が多く、農家の人に経済的な負担をかけさせることになります。

ポイントB:仲間と声を掛け合う

 2人が完全に離れて搾乳する所以外(対尻式牛舎など)では、異常牛の所に近づいたらお互い声を掛け合って注意を促します。
 乳頭を拭く人とミルカーを着ける人がちがうことがよくあるので、誤搾乳防止には大切なことだと思います。

バルククーラーのポイント

ポイント@:クーラーのスイッチ

 当社加入農家では、BMコントローラーという、バルククーラーのスイッチを入れないと搾乳用の真空ポンプが作動しない機械を設置している農家が半数近くあります。この機械を入れている農家では、クーラーのスイッチ入れ忘れということはありません。しかし、残りのBMコントローラーのない農家では、搾乳直前にバルククーラーのスイッチをオンにするか、何頭か搾ってからオンにするか、操作手順を引き継ぎ時に聞いておく必要があります。
 これは機械によっては能力が高く、あまり早くスイッチを入れると中で凍結してしまうからです。

ポイントA:強制攪拌

 強制攪拌するかしないかについても気をつけなければならないことがあります。
 バルククーラーが空で、1回目に牛乳を投入するときは問題ない(バルククーラーのスイッチを入れ忘れなければ)のですが、翌朝2回目、さらに3回目、4回目投入時(隔日集荷の場合)に、BMコントローラー付きの場合は真空ポンプのスイッチをオンにすると0〜20分位の間に自動的に攪拌機が作動するので心配ありません。しかし、その他のバルククーラーの場合、2回目投入以降、強制攪拌のスイッチを入れた方が牛乳の冷却を確実にできるものと思います。これは、過去の次のような事故から得た教訓によるものです。
 バルククーラーの温度センサーは通常クーラーの下の方に付いていますが、隔日集荷の農家の特に4回目投入時には、冷えた牛乳と搾りたての牛乳が混ざらず、バルククーラーの温度が4℃だったにもかかわらず、集荷の時に異臭がしているとの指摘があり、検査の結果、廃棄処分になったことがありました。
 強制攪拌のスイッチについても、機種により時間がたつと自動運転になるもの、そうでないものの違いがあり、後者の場合、スイッチを自動運転にし忘れると、中の牛乳が大量に凍結したり、脂肪分が分離したりする恐れがあるので、注意を払ってください。

牛の健康状態のポイント

ポイント@:エサは食べているか?

 具合が悪いと思われる症状で一番分かりやすいのはエサを食べないということだと思います。ただし、100 %そうかというと必ずしもそうとは言い切れません。エサを食べるスピードが遅い牛もいます。
 首に番号札が着いている牛では、スタンチョンにそのヒモが引っ掛かって食べたくても食べられない状態になっている時もあります。
 エサ食いの悪い牛を発見したら、まず体温を計ってみましょう。正常な体温で反芻しているようなら様子をみてみます。
 体温が高い時はノーサイの獣医に連絡して診察してもらいます。もし、抗生物質を使ったら、牛体にスプレーして、農家の人にも忘れずに書き置きで連絡します。

帰る前のポイント

ポイント@:分娩

 分娩間近な牛がいれば、その牛の様子を見ます。もし、きばっていたり、一次破水が確認されれば、分娩介助の準備をします。

ポイントA:フリーストール

 フリーストール牛舎では、牛が変な寝方をしてストールに引っ掛かっていないか確認します。

ポインBト:スタンチョン

 スタンチョン牛舎ではカウトレーナーが外れて牛体に着きっぱなしなっていないかを、カウトレーナーのスイッチを入れる前に確認します。

ポイントC:バルククーラーの温度

 バルククーラーの温度が下がってきているか確認します。冷え方が遅いバルククーラーでは、帰る時に乳温が10℃を超えている時もありますが、温度が下がりつつあることが確認できれば良いと思います。
 まだまだ細かい注意事項はたくさんありますが、酪農家の直接の収入となる牛乳を出荷することに特に重点を置いて仕事を進めています。
 これからも、酪農家の人に、より安心して休んでもらえるよう、職員が一丸となって前進していきたいと思います。